執念の復権だ。昨年のダービー馬クロワデュノール(牡4、斉藤崇)が1番人気に応えてG1・3勝目を挙げた。
乗り替わりも覚悟した北村友一騎手(39)が中団外から勇気あるロングスパートを仕掛けて差し切った。斉藤崇史調教師(43)は異例の当日早朝調教を敢行して仕上げ、4分の3馬身差の勝利へ導いた。
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雨上がりの青空へ、右手の人さし指を突き立てた。NO・1。最強だ。満開の桜を横目にウイニングラン。その指を愛馬へと向け、喝采に沸く大観衆にアピールした。G1馬3頭の頂上決戦を制して、クロワデュノールと北村友一が返り咲きを果たした。
「いろんな方々がつないでくれた継続騎乗」-。鞍上はレース前の会見と同じ言葉を再び口にした。昨秋の凱旋門賞14着、ジャパンC4着。責任を背負い込み、乗り替わりも覚悟していた。もう負けられない。だからこそ攻めた。中団外で迎えた3コーナー。逃げるメイショウタバルをはるか先に見据え「楽に行かせすぎるとまずいと思った」。腹をくくってロングスパートを仕掛けた。
まだ完調には至っていなかった。「まだ良くなる余地を残しているのか、少しフラフラしてしまった」。直線で左へ手前を替えるのももたついた。差せないのか。「なんとかつかまえてくれ」。願いを込めて右ステッキを打ち込んだ。
最後のひと伸びを生んだのは、異例の当日調教だったのかもしれない。レースまで11時間を切った午前4時58分。ライトに照らされた夜明け前の坂路に、クロワデュノールが現れた。斉藤崇師は「まだちょっと重たいのがあった」と意図を明かす。4ハロン73秒1。G1で1番人気の重圧にも常識にもとらわれず、果敢かつ細心な調整で最後の薄皮を剥ぎにいった。
人々の執念に、昨年のダービー馬は耳を絞って応えた。黒光りする筋肉が弾み、突き抜けた4分の3馬身差。トレーナーは「世代の頂点に居続けるためにも、落とせないと思っていた」と胸をなで下ろした。次走は状態を見極めた上で今週中にも決定される。主戦騎手は「底力はNO・1だと思っている。勝ち切れてよかった。今年の競馬界の主役になってほしい」と思いをはせた。雨のち晴れの笑顔が並んだ表彰式。ぬれた桜の花びらは輝き、より美しく見えた。【太田尚樹】
◆クロワデュノール ▽父 キタサンブラック▽母 ライジングクロス(ケープクロス)▽牡4▽馬主 (有)サンデーレーシング▽調教師 斉藤崇史(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 9戦6勝(うち海外2戦1勝)▽総獲得賞金 9億1664万8600円(同597万600円)▽主な勝ち鞍 24年東スポ杯2歳S(G2)ホープフルS、25年ダービー(以上G1)プランスドランジュ賞(G3)▽馬名の由来 北十字星(フランス語)

