練習試合の“開幕”を迎えた巨人は、新外国人のエンジェル・サンチェス投手(30)が先発した。メジャー移籍した山口俊の代役を期待される新助っ人として「活躍してくれればいい」という選手ではなく「活躍してもらわないと困る」という存在だろう。しかしオープン戦3試合で防御率は10・57。数字だけをみれば“ハズレ”の臭いが漂うが、今試合の投球内容を見る限り、悲観するものではなかった。

球速は140キロ台後半で、制球力もまずまず。やや体の開きが早く、シュート回転する球があるが、指にかかったときの直球には力があった。初回よりも3回の方が球の力も制球も上がっていたし、正直、もう少し長いイニングを投げるところを見てみたかったが、今後の上積みの要素は感じられた。

クイックは1・2秒台の前半から後半で、足の速い選手は盗塁を狙うが、誰もが走れるようなレベルではない。大きな弱点はなく、球速、球質、制球のどれか1つでもレベルの上積みがあれば、ローテーションで回る実力はありそうだった。

少し気になったのは、神経質そうなところ。今試合でワンバウンドを投げたあとにボールの交換を要求する姿を見ると、結果が悪かったときに「言い訳」が多そうなタイプ。こういったタイプは、調子がいいときは波に乗るが、悪かったときに坂道を転がるように悪くなっていく傾向がある。やはり勝負に生きる者は、悪かったときにしっかり反省したり、失敗しても糧にしてエネルギーに変えるようなタイプじゃないといけない。

投手としてのポテンシャルは不安視するほど悪くない。開幕して結果が悪いと不調が長引きそうなタイプに見えたが、まだ調整期間はある。サンチェスにかける期待が大きい巨人にとっても本人にとっても、ラッキーだったと思う。(日刊スポーツ評論家)