阪神にまた1人、新星が輝きを放った。西純矢投手(19)が5回無安打無失点の快投でデビュー戦勝利を飾った。威力ある真っすぐでヤクルト打線を圧倒。阪神のドラフト最上位入団の投手がプロ初先発で白星を挙げたのは、球団初の快挙だった。

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西純は初回に先頭から2者連続で四球を与えた。コースを狙いすぎているように見受けられた。3番山田に対して3ボールから開き直れて無失点にしのいだ。私の経験からいうと、若い投手がガムシャラに腕を振ると、ど真ん中に来たり、逆球になったり、読みにくくて、打者は打ちづらいものだ。この日の西純はボール先行で、真っすぐを投げざるを得ない状況でも抑えることができた。山田や村上らヤクルトの主軸でも、打ち損じるキレがあったということだ。キレがなければ、早々とつかまっていただろう。球速は150キロに満たなかったが、真っすぐの質がよかった。

課題を挙げれば、ストライクを取るボールに、もう少し自信をもたないといけない。ノーヒットながら、ボール先行で苦しい投球ではあった。外角なら手を出してこないから、ストライクを取っても大丈夫だ、というふうに投球を覚える必要がある。3ボールからヤクルトの打者が仕留められなかった球を、早いカウントから自信を持って投げられたらいい。自分がどういうタイプの投手か分かると、変化球でもストライクを取るのが簡単になる。

5回表の投球も8番元山を四球で歩かせた。5回裏は先頭で打席が回り、6回のヤクルトは1番からの打順になる。そういう意味では首脳陣も交代の決断をしやすくなった。5回を無安打に抑えても勝ちのつかない投手もいる。降板直後に近本の本塁打が飛び出したことを考えれば、西純は何か持っている選手に思える。投手は1つ勝つことで大きく変わることがある。次戦で、さらに良くなる可能性を秘めている。(日刊スポーツ評論家)