なかなか得点力の上がらない阪神だったから、意外な展開で決着がついた。3点以内の競り合いになると読んでいたが、阪神がヤクルト奥川を早々と攻略したことで大勝に持ち込むことができた。

両軍の明暗を分けたのは1回の攻防だ。青柳が1死満塁から5番サンタナを2-2から遊ゴロ併殺で切り抜けた。先手を取られると一気にヤクルトに流れが傾きかねない場面だっただけにポイントだった。

この直前の青柳がプレートを外して三塁にけん制するふりをしたのは、自身で気持ちを落ち着かせたかったのだろう。2球続けての内寄りのツーシームで打たせてとることができたのは大きかった。

その裏の阪神だが、矢野監督は島田を1番に抜てきするにあたって、1回から出塁した場合に「盗塁」か「エンドラン」の作戦を繰り出すゲームプランを描いていたはずで、その通りの先制攻撃になった。

1回は島田が中前打で出塁し、中野が1ボールからの2球目、高めストレートにうまくバットをかぶせて打った。1、2番でエンドランを成功させ、3番近本が右越え3ランだから最高の形になった。

トップバッターとして結果を残した島田は、コンパクトな打撃で、足も速いから、これから自信をつけていけば、外野の一角を狙えるような面白い素材だ。CS、日本シリーズでも戦力になるだろう。

しかし、阪神の道のりが厳しいことに変わりはない。これを意味のある1勝にするには、20日の同カードにしぶとく勝ち抜くしかない。(日刊スポーツ評論家)

阪神対ヤクルト 1回裏阪神無死一、二塁、近本(手前)は先制の3点本塁打を放ちナインと笑顔でタッチ(撮影・上山淳一)
阪神対ヤクルト 1回裏阪神無死一、二塁、近本(手前)は先制の3点本塁打を放ちナインと笑顔でタッチ(撮影・上山淳一)