1点の重みに、胸を締め付けられている。オリックス中嶋聡監督代行(51)は悔しげな表情で話す。

「ほんと、それが野球なのでね…。最後には勝ち負けがある。そこ(相手の力)を越して、やっと勝ちになる。それが来ないと負ける。1点でも少なく、1点でも多く。もちろん、これしかない」

8月20日に西村前監督が辞任し、8月21日西武戦(京セラドーム大阪)からは、2軍監督を務めていた中嶋監督代行が1軍の指揮を執っている。中嶋監督代行がタクトを振ってから19試合が経過した(11日ロッテ戦終了時点)。このところ、僅差の試合が目立ってきた。3点差以内は4勝8敗。1点差となれば1勝4敗。勝ち負けだけで判断すれば、接戦を落としていることになるが、現実的には19試合中、12試合が3点差以内での勝負。要するに「競ったゲーム」ができているということだ。

もちろん、勝負の世界。勝たないと意味がない。ただ、中嶋監督代行が「今すぐ、明日やってできる問題ではないと思う。そのためにどうするのか、どういう練習をするのかを積み重ねていかないと」と言うように、勝利への意識改革は少しずつ進んでいるように見える。

突然の監督代行から約3週間がたった。「全く何も知らない状態だったけど、なんとなく見えてきた。『こうすればいいのかな』とか、『こうしたいな、これが必要だな』というものが理解できてきた」。中嶋監督代行もグラウンドに立ち、選手と同じ目線で日々奮闘している。

目指すは「勝利&育成」。難しいテーマにも全力でぶつかる。現在チームは最下位。借金も抱え、優勝争い、CS出場圏内を目指しているとは言い難い状況だ。だが、目の前の一戦に必死で立ち向かう。「勝ちにこだわることが必要になることもある。ただ、若い選手を使うのが、果たして育成と呼べるのかというところ。チームの力を上げることが育成。まだまだやることはある」。

中嶋監督代行になってから存在感を示している「ラオウ」こと杉本は29歳。正捕手争い参戦中の伏見、ヒットマンの西野は30歳。外野手登録ながら、一塁手として出場機会を得ている33歳の松井佑は、けがを恐れずベンチに飛び込んででも飛球を追う姿勢がある。

中嶋監督代行は、ドラ1左腕にも目線をやる。2軍で9試合に登板して4勝1敗、防御率2・04と奮闘している宮城については「今は、探り状態ですね。先発なのか中継ぎなのか。特徴のあるインステップなので、体の使い方を考えたときに長いイニングもつのか。そこがテーマになる。何球までいけるのかとか」と期待を寄せる。「今から(1軍で)使うとなれば『いける』と思う。ただ、中継ぎで彼を使っていくのかとなれば、また少し違ってくる。(1軍で)使いたいのは使いたい。でも、お試し(昇格)とかをする選手じゃない。彼は、ちゃんとした戦力なので」。

明確な育成プランは、中嶋監督代行をはじめ、球団全体で考えている。選手たちは迷うことなく、力いっぱいのプレーで「僅差の壁」をぶち破るだけだ。【オリックス担当 真柴健】