ソフトバンクの春季キャンプは第2クールに入った。A組野手陣の午前中の練習メニューには約40分の「アメリカンノック」が加わった。外野を左右に70~80メートルほど走りながらノッカーの放った飛球を捕るもので、シーズン中でもしばしば目にする。試合続きで走り込み不足解消などに取り入られるメニューだが、守備練習前のカリキュラムとしては珍しい。南海時代に「アメリカンやるぞ!」とコーチから言われてコーヒーを探しに行った若手選手もいたという、なんともほほ笑ましいエピソードを思い出してしまった。

相変わらず、無観客の影響でキャンプ地・生目の杜はさびしい。それでもこの日はスタンドに12人のスーツ姿の一団が陣取った。オリックス、西武、ヤクルト、DeNAの4球団のプロスカウトたちだ。10球団がキャンプ休日。ホークス視察が重なったのだろう。一挙に12人ものプロスカウトがやって来るのも珍しい。FA戦略やトレード、戦力外選手の獲得など彼らの仕事は「水面下」で行われるが、他球団の戦力調査も重要な任務。「やっぱりホークスは選手の層が厚い。欲しい選手はたくさんいますよ」。あるスカウトはそう言ってグラウンドに目をやった。今年はコロナ禍の影響で宮崎、沖縄のキャンプ地を自由に視察することも難しい。それでも自軍のさらなる補強に向けた調査は欠かせない。キャンプ中に故障者が出れば、トレードも必要になってくる。あるスカウトは「ホークスは宝の山」とも言った。

昨オフは退団した内川がヤクルト入り。育成田城もオリックス、小沢もヤクルトへ移籍。1つのトレードがチームの戦績を左右することもある。球音響くキャンプ地では「水面下」の戦いも静かに行われている。【ソフトバンク担当 佐竹英治】