マスクを脱ぎ捨て、オリックス飯田大祐捕手(30)は左翼席に伸びていく打球を目で追った。脳裏に焼き付いているのは19年6月20日の巨人戦(東京ドーム)。2点リードの6回2死一塁で打席に迎えるは丸だった。先発のK-鈴木をリードし、1発だけは警戒する中での2球目-。「ちょこんとバットに当てられた感じだったんですけど、これが入るのか…と」。同点2ランを浴び、ぼうぜんと肩を落とした。「プロ生活の思い出は、その1球ですね。まじか…という感じでした」。一瞬の出来事で1球の重みを知った。

19年6月、オリックス戦の6回、2点本塁打を放つ丸。捕手は飯田
19年6月、オリックス戦の6回、2点本塁打を放つ丸。捕手は飯田

16年ドラフト7位でオリックスに入団。プロ4年で通算12試合に出場し、22打席で無安打だった。「ヒット1本は打ちたかったですね…。チャンスはいただけただけに悔しい気持ちはありますね」。安定した守備が売りの捕手として、若手投手からの信頼も厚かった。

20年オリックス退団選手(※は育成)
20年オリックス退団選手(※は育成)

今秋、構想外を通達された。その時に球団から「力を貸してくれないか」と言われた。提示された新しい仕事はブルペン担当補佐だった。「すぐ家族にも相談して『はい、受けさせてください!』と返事しました」。来季からの役目はもう具体的に分かっている。「ブルペンでボールを受けたり、電話を取ったり。(兼任コーチの)能見さんが選手第一でやられると思うので、不在のときにサポートしていけたらなと思っています」。

オリックス飯田大の年度別成績
オリックス飯田大の年度別成績

投手を引き立ててきた捕手らしい思考で周囲をもり立てる。「グラウンドでベストパフォーマンスを出してもらうのが、自分の仕事。選手たちに最高のプレーをしてもらえるように。全部が全部、初めてのことなので、勉強しながらやっていきたい」。現役は引退したが、ユニホームは脱がない。新たな景色でマスクをかぶる日々がスタートする。【真柴健】