ソフトバンク、阪神、中日で2軍バッテリーコーチを務めた日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(60)が、およそ1カ月ぶりのリポートを届ける。8日のDeNA-ヤクルト戦(横須賀)では、高卒プロ3年目の本格右腕、ヤクルト金久保優斗投手(20=東海大市原望洋)のピッチングに、今後の課題を見た。

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8月4日にDeNA-ロッテ戦をリポートしてから1カ月が経過した。実は先月下旬に微熱があり、その日から自宅待機の生活を送っていた。翌日には平熱に戻ったものの、2週間の隔離生活。その間、かかりつけの医師には新型コロナの症状もないことから、軽い風邪の症状ではないかと言われたが、万が一にも取材先で迷惑をかけるわけにもいかず、念には念を、の思いで、自宅で過ごす日々だった。

幸いにもその後の体調変化もなく、おかげさまで評論活動などを再開することができたが、こうして、いざ感染の心配に直面すると、大変な思いをするんだと身をもって感じた。改めて、感染を防ぐためにこまめに手を洗う、3密に気をつけるなど、予防を徹底することや、規則正しい生活を送ることで体調管理に努めることで、少しでも感染リスクを減らさないといけないと痛感させられた。そんな思いをした直後だけに、スタジアムから見るファームの試合は新鮮だった。

ヤクルトの先発金久保が目に留まった。5回を投げて3安打1失点。5三振を奪った。最速は146キロ。常時143キロのストレートはあと2~3キロの上積みはほしいなと感じたが、スライダーとのコンビネーションは良かった。

DeNA打線には3番ロペス、5番オースティンが入っており、なかなかの重量打線。昨年右肘の手術から復帰し、今季は実質プロ1年目という位置付け。183センチ74キロとまだ線も細く、特に下半身はまだまだ鍛える必要がある。

今回が2度目の先発で、まだスタミナに課題がありそうで、5回2死走者なしから桑原にカウント2ボール。ストライクを取りにいった3球目ストレートが高く入ったところを、スタンドに運ばれた。こうしたところに、体力強化の課題が明確に出ている。

ただ、ロペスとの第2打席は追い込んでからワンバウンドになるスライダーで空振り三振に仕留めている。1死三塁の場面だが、ロペスを怖がらず、向かっていく姿勢がいい。昨冬台湾ウインターリーグで自信をつけて戻ってきたと聞いた。今年にかける気持ちが強く、練習の強度を上げようと思った直後のコロナ騒動で、思うように練習できなかったとも聞いた。手術を経て故障も癒え、はやる気持ち、そして3年目を迎えて焦りもあると思う。

私がこの試合で見た限りでは、スライダーは良かった。曲がりが良く、ストライクも取れる。そしてストライクゾーンからボールゾーンへ制球できており、あの精度なら空振りも取れる。先述したように、ストレートの球威をもう少しあげて、スライダーのキレを磨けばさらに結果がついてくるようになる。あとはフォーク、チェンジアップをスライダーと同じ精度に上げていく必要がある。

金久保が5イニングを投げたのははじめてと聞いた。桑原に打たれたホームランは、まさに今の金久保の実力をそのまま表している。先発ならば、球威を保ちながらいかに5回から先のイニングを目指して行けるか。そのためにも、もっと体を鍛え、スタミナと強さをつけてどんどん意欲的に投げてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)