99回目の夏の甲子園。史上初の2度目の春夏連覇を目指した大阪桐蔭は、3回戦で敗れた。それでもセンバツから数えると、2回戦まで公式戦26連勝。日々の練習の成果なのはもちろんだが、勝ち続けた裏には西谷浩一監督(47)の「言葉の力」もあったのではと思っている。

 主将を務めた福井章吾内野手(3年)は「たくさん良いことを言ってくれる。意識、言葉、発言、ミーティング。尊敬しています」と西谷監督について話していた。福井が新チームの主将に就任してから野球ノートを提出すると、西谷監督からの返事は「主将力」と、たった3文字だけ。それが約2カ月続いた。福井は「自分の色を出さないと。1つ、2つ上と一緒のことをやってはだめ」と自分なりに考えた。主将として西谷監督と話す時間は多く、グラウンドで残ったり寮でも話したり。そして「キャプテンとしての心構えや、人を見て声掛けしたり、言葉であやつること」を学び、歴代随一のチームのまとまりを作り上げた。

 西谷監督の例え話はとても心に残る。新チーム結成時に「ご飯の茶わんも大きくないと、ご飯はいっぱい入らない。土台を大きくしないといけない」と基礎作りの大切さを話し、冬の強化期間には「1、2週目はペンキを薄く塗って、最後にニスを塗って完成させる」と、少しずつ積み重ねることの重要さを例えたと言う。

 インタビューでも印象的な言葉がある。2-1で競り勝った智弁和歌山との2回戦。試合後の囲み取材で「打ち合いになるかなと思っていたので、それならしっかり守ろうと思っていました。1ミリか0・1ミリ、0・01ミリくらい粘り強さがあったということですかね」と振り返った。12安打を浴びながらも、9回1失点に抑えたエース徳山壮磨投手(3年)については「ボクシングでボディーを打たれたけど倒れなかったということですかね」とたたえた。

 ありきたりな言葉ではなく、相手の心に残る言葉を選び、使う。今夏の取材を通して「言葉の力」の大きさを感じた。【磯綾乃】