野球手帳

女子マネから気付かされた言葉を大切に人と話す意味

東京本社アマチュア野球担当記者としての1年間が終わった。

いろいろな人に出会った。大御所と呼ばれる監督、ドラフト候補選手はもちろん、SNSを通じてアマ野球ファンの方々と会う機会にも恵まれた。正確には数えていないものの、700枚以上の名刺を使った。

恐縮ながら、名刺を渡した全員の顔や名前は覚えていない。未熟な人間なので、名刺交換時の「気合」にもどうしても濃淡が出てしまうことがある。

1年前の冬。取材に訪れたある高校で、チーム事情を知りたかった私は、女子マネジャーに名刺を渡した。たぶん、気合の濃淡でいえば「淡」寄りで。本題とは別に、彼女がマネジャーを志望した理由も、せっかくだから聞いた。記事にできる機会はなかった。

夏、久しぶりに話したその女子マネジャーから、こんな言葉をもらった。衝撃的だった。

「あの日、自分の気持ちを人に話す機会を初めてもらいました。野球部のマネジャーは目上の人と関わる事が多くありますが、慣れることはありません。でもあの日、人生で初めて名刺を受け取った瞬間、大人になったんだと思いました。言葉1つ1つを大切にして誰かと話すというのが、どれだけ重要で貴重な経験なのか知りました。あの日から敬語の勉強をしたり、名刺の受け取り方を調べたり、誰かと接した時は復習したりして、今の自分になるための始まりをもらったと思います」。

年齢半分以下の高校生の言葉が、グサッと刺さった。この仕事の「怖さ」を知った。同時に、何か大事なものを失いかけていた自分を恥じた。彼女にとっては、普通の御礼だったのかもしれない。でも、私にとってはサラリーマン人生中盤での金言になった。

笑いあり、涙あり。いくつになっても人生に大切なことをたくさん教えてくれる高校野球に感謝しつつ、名刺をたっぷり補充する。来年1月からプロ野球の取材に移る。今度はどんな人たちと出会えるのだろう。しっかりと思いを込めて、あいさつしたい。【金子真仁】

 野球をこよなく愛する日刊スポーツの記者が、その醍醐味、勝負の厳しさ、時には心が和むようなエピソードなど、さまざまな話題を届けます。

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