群馬3連覇だ! 第100回全国高校野球選手権(8月5日開幕、甲子園)群馬大会は25日に決勝戦が行われ、前橋育英が3年連続4度目の甲子園出場を決めた。決勝戦は3年連続で高崎健康福祉大高崎と対決。終盤で3点差を追いつき、9回に梅沢修二外野手(3年)のサヨナラ打で決着をつけた。

 「まわれ、まわれ!」。同点の9回1死一塁。前橋育英・梅沢の左翼線への一打にナインがベンチから体を乗り出した。どっちが先だ…。白球よりも先に一塁走者が生還した瞬間、拳を突き上げて歓喜の輪ができた。もみくちゃになり、本塁上はなだれ状態。3年連続で甲子園出場の喜びを分かち合った。

 初回にいきなり3点を先制され、6回には2点を追加された。失策から失点するなど終盤まで劣勢の展開。それでも誰も諦めなかった。3点を追う8回。先頭の4番小池悠平捕手(3年)が二塁打で流れを傾けると、2本の適時打で同点に。直後の9回の守りで1死満塁の絶体絶命のピンチもエース恩田彗吾投手(3年)が気迫あふれる投球で0点に抑え、サヨナラ劇を呼び込んだ。北原翔主将(3年)は「最高です。みんな諦めずにやってくれた」と男泣きした。

 「メーカーさんに言うんですよ。絶対に打てるバットないんですかって」と荒井直樹監督(53)は笑い飛ばした。そんな魔法は存在しない。それは重々承知している。「だからこそ、ひとつひとつの積み重ねですよ」。練習から甲子園を強く意識。キャッチボールから1球への執着を持ち、着実に歩みを進める。これが伝統的な前育スタイルだ。

 チームでは1日15分の読書に取り組んでいる。荒井監督を始め、部員70人が一斉に本と向き合う。積み重ねの大切さを説くと同時に「どんな人間に出会うか、どこの場所に行くか。それが本にある」。監督として選手の将来を思いやる親心がかいま見えた。

 1球への執着心で大一番で勝利。群馬3連覇となり、今年も甲子園でプレーできることになった。北原主将は「群馬の負けた高校の分まで背負っていきたい」と健闘を誓った。さあ、憧れの舞台で大暴れだ。【山川智之】