春2回、夏4回の甲子園出場で、夏は優勝の経験がある取手二が初戦突破した。

伝統の血が騒いだ。1-2で迎えた7回表2死満塁。4番の石垣善大内野手(2年)は心の中でつぶやいた。「取手二はのびのび野球。思い切り振る」。狙い通りの外角直球をフルスイングすると、打球は左中間を破り走者一掃の三塁打に。逆転に成功すると、海老原コウ内野手(3年)も続いて中前適時打。この回4点を挙げ勝利を決めた。

石垣は、取手二が甲子園優勝を果たしたときの動画を見るのが大好きだ。昨晩も動画を見て、大会への気持ちを奮い立たせた。石垣だけでなく、全員の頭の中に取手二の野球は刻まれている。

新型コロナウイルスの影響で練習自粛中、当時の動画をチームのグループラインに送り合い「先輩のこのプレー、かっこいいよな」と語り合った。石垣はこの日、第3打席まで2三振とチャンスをつぶしていたが「次はできるぞ」「いつも通りのプレーだ」と3年生が声で後押し。「先輩たちの言葉が胸に刺さった。下を向かずに打席に入ることができました」。持ち前のフルスイングで勝利を呼び込んだ。

9回裏2死からはマウンドにも上がり、自信のある真っすぐで三振に仕留めた。伝統の「のびのび野球」で勝利を手にした。

取手二で甲子園出場経験がある後藤賢監督(60)は「いつも木内監督には『勝とう勝とうと言っているうちは、勝てないよ』と言われてきた。今日はその意味が分かった気がする」と温かいまなざしを向けた。石垣は中学時代、取手二の優勝メンバーだった下田和彦さんが監督を務める「取手ファイトクラブ」でプレー。「のびのび野球で、自分のプレーを全力でできれば結果が出ると教わってきた」とスカイブルーのユニホームで胸を張った。

36年たっても精神は引き継がれていた。次は常総学院との対戦だ。石垣は「小学校のころから対戦したいと思っていた。力を合わせて全国にもう1度、取手二の名前を響かせる野球をしたいです」と力を込める。伝統復活へ。新しい力が歴史を刻む。