夏の県選手権13連覇中の聖光学院が、センバツ21世紀枠の磐城を4-2で振り切り、準決勝進出を決めた。2回に磐城に先制を許すも、4回に同点とし5回に勝ち越し。7回に追いつかれたがその裏に2点を奪い突き放した。夏の甲子園大会が中止となっても、王者の底力はさびつかない。センバツの代替大会に当たる甲子園交流試合(15日)を控えている磐城への、熱いエールとも言える白熱の好勝負だった。

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甲子園という目標がなくなっても、福島の頂点は譲れない。先制を許しても、追いつかれても、動じない強さが、聖光学院にはあった。7安打6四死球と走者を出しながらも、粘り強い投球で2失点に封じた舘池亮佑投手(3年)は、「秋は初戦負け。とにかくぶつかっていこうと思った」とチャレンジャー精神で149球を投げ続けた。

コロナ禍で満足な練習ができない期間、斎藤智也監督(57)は磐城の話を選手に繰り返してきた。前夜のミーティングでも「磐城がなぜここまで躍進してきたのか。彼らは勉強も頑張っているし、部員も少ないのに一致団結してあのレベルの野球をやっている。お前らより頑張っているんじゃないか。自分たちだけが頑張っているんじゃないんだぞ」と話した。

特別な気持ちで臨んだ1戦だった。「私の中には、甲子園に向けての壮行試合的な感覚があった。今日はそこまで提示できませんでしたが、うちが勝って野球の厳しさを、少しでも相手に感じさせようじゃないかと。磐城を甲子園に送り出すために、スイスイ勝たせては逆にダメだと」(斎藤監督)。県内で誰よりも甲子園を知るチームとしての、エールでもあった。

昨秋は県大会初戦で学法石川にコールド負け。それでも、猛練習を積みながら夏に真価を発揮するのが聖光学院の伝統。甲子園はなくなり、心が折れかけたが、魂は受け継がれている。「残り2試合だけど5、6試合戦うくらいのタフさがないと夏は勝ちきれない。まだ、夏の空気を自分たちが支配するという、本当の聖光学院にはなっていない。次はもっと動じないで戦って、本来の聖光にもう1ランク近づいてほしい」。斎藤監督は、最後まで選手たちの成長を信じながら頂点を目指す。【野上伸悟】