<高校野球香川大会:高松商7-1藤井>◇17日◇3回戦◇レクザムスタジアム

「浅野伝説」誕生!! 香川大会で、高校通算62本塁打の高松商・浅野翔吾外野手(3年)が仰天の申告故意四球を食らった。3回戦の藤井戦で、1点リードの2回2死一、二塁で歩かされた。次打者が内野ゴロに倒れて相手の敬遠策は的中したが、今秋ドラフト候補の大物ぶりを示すシーンとなった。それでも7回に適時二塁打を放って8強進出に貢献した。

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スラッガーの宿命だ。高校通算62発の浅野が奇策に遭った。1点リードの2回2死一、二塁で打席へ。藤井ベンチが動く。申告故意四球。満塁にしてでも、一塁に歩かされる。浅野は一瞬、打席で立ち尽くした。「走者が一、二塁。さすがにないかなと。ビックリしました」。だが、表情を動かさず、後ろを打つ林息吹外野手(3年)に言った。

「頼んだぞ!」

打つ気満々で打席に入っても勝負を避けられる。それでも冷静だった。「いままで一緒にやってきた仲間を信じている。顔に出さずに」。満塁機で林は三ゴロに倒れたが、長尾健司監督(52)は想定内だった。

「向こうも勢いをつけたくない。次の打者に伝えているんです。『満塁で押し出し四球の申告故意四球、あるぞ。お前との勝負、あるぞ』と伝えています」

浅野は夏初戦の10日坂出戦でも本塁打。藤井の小林大悟監督(46)も「浅野君と勝負したくなかった。チャンスでスイッチが入って、手をつけられない。春や秋ならやってなかった」と話した。打席での威圧感は相手にとって脅威だった。

浅野も成長した。昨年3月の県大会。打ち気をそらされ、心が乱れて指揮官に叱られた。「お前が顔に出してチームの雰囲気が下がる」。長尾監督から智弁学園の大砲岡本和真の逸話を教わった。岡本も敬遠で不満が顔に出たとき、指導者に星稜・松井秀喜が5連続敬遠された92年の映像を見せられたという。ゴジラ松井は、バットをそっと地面に置いて、一塁に向かっていた。「これがプロの一流の選手だ」と諭され、いまや、巨人の4番として君臨している…。浅野が心にとどめるエピソードだ。

「僕も敬遠されますが、それ以上に敬遠されている。1打席の敬遠で顔に出ているようではまだまだ。勝負してもらえる打席があるだけ、ありがたい」と浅野も言う。この日もスカウトがチェック。適時打1本で8強進出に貢献したが、長距離砲の「新伝説」が強烈に際立った。【酒井俊作】

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