美しい弾丸ライナーの発射だ! 阪神福留孝介外野手(37)がDeNA井納から2号ソロを右中間最深部に運んだ。0行進が続いていた6回1死。内角に食い込む115キロを引きつけ、激しく振り抜いた。
「低かったから入ると思わなかったけれど、よく飛んでくれた」
四方八方を黄色に染めた虎党の叫びは、打球が進むにつれて爆発した。右中間に飛んだ打球は緩やかな浜風を切り裂いた。そのまま吸い込まれるようにスタンドイン。二塁塁審の腕が大きく回り、球場の全員が本塁打を確認した。3月29日中日戦(京セラドーム大阪)以来の2号ソロで、甲子園の雰囲気は一変した。
昨季に見せた苦悩の表情は今の福留にない。「例年以上に気を使っている」という体のメンテナンスで開幕に合わせてきた。キャンプ序盤のことだ。ノックの捕球時、福留の右手は常にズボンの右後ろにあるポケットの表面に添えられた。スキージャンプの滑走時のような位置だ。それは約10メートルの距離で取り組むゴロの捕球練習でも変わらない。「変に打球が変わって右手をケガしたらバカらしいから。俺らは外野手だから普段捕るときも片手なんだし」。地道な基礎練習であっても細心のケアを怠らない。シーズンを見据えた福留ならではの姿勢だった。
試合は負けた。それでも初の甲子園で健在ぶりを見せつけた。「シーズントータルで考えたらそういうこと(負け)はある。やれることを1つずつやっていくしかない」。常勝にはやはり、この男の力が欠かせない。【松本航】



