どでかい仕事をやってのけた。プロ初先発の巨人田口麗斗(かずと)投手(19)が、強気の投球でヤクルト打線を翻弄(ほんろう)。7回1失点で初勝利を挙げた。4回には自ら決勝打を放ち、本調子に遠い打線の中で輝いた。「初先発、初勝利、決勝打」はチームにとって初の快挙。広島・新庄高出身、ドラフト3位のプロ2年生が、自力で先発枠をこじ開けた。
プロの中に野球小僧が1人混じっていた。日に焼けた顔をギュッと引き締めて、田口が勝ちたい気持ちをむき出しにした。ベンチに戻るたびにガッツポーズを繰り返した。白星のかかった5回無死、井端の美技に口をすぼめ、目を丸くして驚いた。「人生に一度しかない、初登板というチャンス。居心地が良かった」と、大きな舞台を満喫した。
多彩な球種などない。好調ヤクルト打線の懐に、自分のボールを放り込める度胸が19歳にはあった。鋭いクロスファイアのラインに縦割れのスライダー。前日4安打の川端にも動じず、シンプルに勝負した。最後は3打席とも外角直球。内野ゴロに封じてみせた。4回2死一、三塁の打席ではボテボテの三ゴロに全力疾走。駆け抜けセーフで、自分で自分に驚いた。「信じて、思い切って。力を出せた」。7回1失点でローテの谷間を埋め、決勝打まで。こんな男がジャイアンツ球場に潜んでいた。
広島でノビノビと育ち、巨人の門をたたいた。昨年の納会でルーキー全員が行う一発芸では、アニメ「妖怪ウォッチ」の「ようかい体操第一」を披露し、一番の笑いを誘った。持ち前の度胸で場の雰囲気を和ませ、かわいがられている。初めて厳しさを教えてもらったのは今春キャンプ。1軍に呼ばれた紅白戦だった。
先輩にめった打ちされた。1回7失点で2軍にUターンした。「これが僕の実力です」と笑顔が消えた。翌日から生活を変えた。早出練習を取り入れ、今でも続ける。フォーム改造にも取り組んだ。登板5日前の6日には「落ち着かなくて」と緊張のあまり、予定していた球数を超え、先発の事前調整としてはありえない177球も投げ込んでしまい、寮に帰ると6時間も昼寝をしてしまった。
どん底からはい上がり、1軍のマウンドをつかみ、チームの連敗を3で止め、息吹を与えた。ゲームセットと同時に原監督は「次、行こう」と次回登板を即決した。19歳にはあどけなさと迫力が同居する。成長曲線は、大人の想像をはるかに超える。待望の「新成」が誕生した。【細江純平】
▼プロ2年目、19歳6カ月の田口がプロ初登板を白星で飾った。巨人投手の初登板初勝利は、今年の3月29日高木勇以来19人目(外国人投手は除く)。田口はまだ19歳6カ月で、10代投手では12年4月8日宮国以来、球団史上7人目になる。打っても田口は4回に勝ち越しの適時安打。プロ初登板で自らV打を放って白星を手にした巨人投手は初めてだ。他球団を見ても、93年4月20日伊藤(ヤクルト)が阪神戦(先制の左安)で記録して以来、22年ぶり。ドラフト制後では73年4月17日新美(日拓=先制の中安)74年6月25日石田真(阪急=勝ち越しの一ゴロ)93年伊藤に次いで4人目の快挙。



