神様軍団がシーソーゲームに持ち込んだ。1点ビハインドの8回、代打阪神狩野恵輔外野手(32)が左前打で切り開き、1死三塁で代打関本賢太郎内野手(36)が右前にしぶとく同点適時打だ。代打で7打数4安打と狩野は絶好調。関本はようやくの今季初安打をマークした。生え抜きのベテランが、勝負どころににらみを利かせる。

 ひと振りに込める思いの強さが同点劇を演出した。悔しいサヨナラ負けを喫して、主役は立ち止まることなくバスへと乗り込んだ。「バットに当てるだけ。また明日」。殊勲打も実らない敗戦…。それでもベテランの存在感は際立った。

 8回1死三塁で和田監督は勝負手を繰り出す。代打関本。好投の左腕バルデスにプロ19年目は落ち着いていた。2球で追い込まれたが、ここから真骨頂だ。4球目の外角低めチェンジアップに手を出さない。その直後も低く沈む球を見極める。フルカウントになり、浮いたスライダーを見逃さなかった。「走者をかえすんだという、その一心で打ちました。本当に、それだけです」。詰まりながらも右前に落とし、今季初安打となる同点適時打を放った。

 息詰まるワンチャンスで決められるのは、投手を自らの「土俵」に引き込む精神的な強さがあるからだろう。3月28日の中日戦。延長10回無死満塁でサヨナラ死球をもぎとった場面が象徴的だ。祖父江にファウル2球で追い込まれても、まるで動じない。2球続いた外角低めスライダーを見極める。その直後だ。外寄り直球は甘めだった。だが、強引に打ちに行かず、ファウルで逃れたのは理由があった。

 関本 真っすぐもスライダーも両方見たからね。まだ、自分のなかでは勝負じゃないと思っていたから。

 勝負を急いで結果を求めない。祖父江との駆け引きをベンチで見ていた若手野手は言う。「セキさんはすごい。相手の投げる球がなくなっていったから」。満塁で逃げ場がない相手に、じっくり選球し、そしてじわじわと追い詰めていく。代打の貫禄がなせるわざだった。

 敗れても、強力な代打陣が際立った。同点劇の脇役は狩野だった。8回先頭で代打出場すると、外角直球を鮮やかに振り抜き、ライナーで左前へ。「打席での打撃しか考えていない。それだけ集中してやっている」。バルデスの直球はスピードガンよりキレがあるのが、ナインの共通認識だ。事前に、スコアラーや打席に立った先輩打者から情報収集していた。今季の代打は、7打数4安打で打率5割7分1厘。いまや「代打の神様」関本と並ぶ存在感だ。強力なコンビが勝負どころで控えている。【酒井俊作】