静かに、偉大なる46歳が大きな節目を迎えた。兼任バッテリーコーチの中嶋聡捕手が、実働29年のプロ野球タイ記録を樹立した。8点リードの9回にマスクをかぶり達成。球場内からは大歓声が沸き上がった。0封リレーは目前も、クロッタの乱調で2点を失った。そのうちの1点となってしまった暴投。二塁走者に生還を許したが、全力で追いかけた。「感慨なんてない。反省ばっかりやわ」。初めて1軍出場した18歳の時と同じ、全身全霊でプレーした。長い歩みを刻んできた証しを、この日も刻んだ。

 昨季は1試合の出場も、今季は開幕から「第3の捕手」として出場選手登録。大野、市川が離脱中のチーム事情もあるが、戦力として迎えた15試合目で、出番を迎えた。キャンプ中は指導者中心。まだ夜が明けない早朝に球場入り。練習量を維持するため人目を忍び、たった1人で早出練習に汗を流していた。「別に特別なことをしているわけじゃない」とかわすが、重労働のポジション。陰での努力が、29年という長い道のりを支えてきた。現在の球界に残る、ただ1人の阪急戦士。誇り高い、いぶし銀の金字塔を打ち立てた。【高山通史】

 ▼プロ29年目の中嶋が今季初出場。1軍の試合に出場した実働年数が29年となり、82~10年工藤(西武)のプロ野球記録に並んだ。中嶋は横浜に在籍した03年を除きパ・リーグ球団に所属。パで実働28年は自らリーグ記録を更新し、セ・リーグ最多28年の山本昌(中日)に並んだ。また、中嶋は46歳0カ月。投手の浜崎(阪急)が50年に48歳8カ月で代打出場したことはあるが、投手以外のポジションについた野手は57年岩本(東映)の45歳5カ月を抜くプロ野球最年長となった。