食らいついたかの? 阪神が、執念で巨人戦3連敗を免れた。同点の8回に代打攻勢がはまり、狩野恵輔外野手(32)、新井良太内野手(31)の連続適時打などで3点を勝ち越し。どちらも外野の前にポテンと落ちる安打だが、見てくれ不問の泥くさい打球はチーム状況とシンクロ。敗れれば首位巨人と3・5ゲーム差となる一戦を執念でものにした。

 あまりの押されぶりに、狩野は打席を外した。同点の8回1死満塁。代打で送り出され、気合十分のはずが巨人マシソンのボール球2球にバットが回る。「満塁なんで押し出しもある。(ボール球を振るのは)ダメなんですけれど、イメージを切り替えました」。屈伸をし、息を吐いた。重心を下げ、ポイントを前に。その執念が、3球続いたボール球のスライダーを前に飛ばした。

 体勢が崩れた。当たった瞬間にはバットがはじき飛んだ。それでもふわりとした打球がセンターに向かっていた。「落ちろ!」。全力疾走しながら願うと、白球は中堅立岡の前にポトリと落ちた。黄色の虎党が総立ちになっていた。

 狩野 自分らしい、いいヒットやったと思います。本当にみんながいい場面を作ってくれているわけですから、地道にやっていこうと準備しています。

 決勝の中前適時打に、一塁ベース上では白い歯がこぼれた。苦しいチームを救う懸命な仕事ぶりが、狩野にはよく似合う。

 「イチ、ニ、サ~ン。ニ~、ニ~、サ~ン!」

 DeNA戦があった4日の試合前練習もそうだった。3列に並んでのウオーミングアップ。その列の先頭に狩野は鳥谷、俊介と歩み出た。普段は藤浪、松田ら若手が引っ張り、ベテランになるほど列の後方に陣取る。だが、その時チームは4連敗中だった。首脳陣の提案も受け、15年目の32歳が先頭で大声を出すことを決めた。

 「自分でも連敗してて、暗いなと感じていたんです。やるからには元気よく。そう思って雰囲気を変えるために声を張ったよ」

 そんながむしゃらな姿が数時間後、連敗を止めていた。今回の中日、巨人6連戦も1勝4敗と苦しんでいた。その間の出番は2度。代打はチーム状況に左右される立場だが、狩野は常にチームを思い戦っている。

 「気持ち的にも(同一カード3連敗は)いやだった。そうならないように大声援が後押ししてくれました」

 狩野の背中に導かれ、代打新井も左前適時打で続いた。代打攻勢の成功が、6連敗中だった東京ドームの空気を変えた。巨人に一泡吹かせ、和田監督も「今日はどうしても落とせなかった。よく頑張ってくれた。控えを含め、全員で戦う姿勢だった」。引き離される危機で踏ん張り、1・5ゲーム差の2位キープ。笑顔が戻ったタテジマ戦士の中心には、狩野がいた。【松本航】