西武が総力を結集してロッテとのAクラス攻防戦の第1ラウンドを制した。同点の延長10回1死二塁で代打大崎雄太朗外野手(30)が左中間突破の勝ち越し二塁打を放った。最後は守護神高橋朋己投手(26)がプロ初の2イニングを投げて逃げ切った。ゲーム差0ながら勝率で上回り一夜で3位の座を奪還。CSへ、ラストスパートが始まる。
代打こそが生きる道だ。延長10回1死二塁。切り札として大崎が告げられた。「代打は監督に使ってもらって初めて出来上がる野手。厳しい状況でしか使われない。それが宿命」。理念を胸に秘め、打席に向かう。ロッテ益田に追い込まれたが外角148キロ直球に集中を研ぎ澄ませた一打で左中間にはじき返した。直前で森に代走を送り、炭谷がスリーバントを敢行。チームの執念を一振りで実らせた。
代打道を貫いてきた。2軍でも先発は少なく、代打をなりわいとしてきた。「2軍でも得点圏で使われる。訓練させてもらっています」。6月11日の広島戦では代打で安打を放ったが、その後は出場機会なく同24日に抹消された。「代打はチームの状態がいい時は出番が少ない。分かっています」。約1カ月半、牙を研ぎ、苦闘の1軍に帰ってきた。
心が整理できている。昨春キャンプでフリーテーマでスピーチが課せられた。所定の時間で理路整然と話すのは難しく、苦戦する選手が多かった。だが大崎は趣味の時計について、深い世界をとうとうと語った。当時打撃コーチで聞いていた田辺監督は「話が面白かった」と感じていた。
この日は指揮官の言葉が胸に染みた。球場入りし、コーチも席を外し、監督と選手が向き合った。「1球、一打、一投に集中しよう。やるのは今しかない。オレは信頼している」。約10分間の熱弁を聞き、大崎も「おかげで集中できた」と受け止めた。
3位を奪還した。だが初戦を制しただけだ。「これからも厳しい戦いが続く」。代打に生きる大崎が勝利の余韻を締めた。【広重竜太郎】



