浜松市出身の中日鈴木翔太投手(22)が地元で涙の4勝目を手にした。毎回走者を背負う苦しい投球の中、7回途中まで3安打1失点と踏ん張った。地元のヒーローに、浜松球場のスタンドは「翔太コール」の大合唱。お立ち台で故郷への思いを問われると、声を詰まらせた。

 一瞬の静寂の後、一筋の涙を流しながら話し出した。「今年は何としても結果を残したかった。こうして浜松で勝たせてもらった。少しでも成長した姿が見せられたと思う。また来年、浜松に帰ってくることができたら、成長した姿を見せたいと思います」。地元登板は中継ぎでプロデビューした1年目の14年6月17日西武戦以来。浜松でつかんだ勝利をかみしめた。

 試合前、阪神ナインが練習する中、一塁側ベンチに鈴木は静かに座った。フリー打撃を行う様子をジッと観察。「小学校、高校と野球をやってきたところ」と慣れ親んだ球場で、狙いを定めた。2-0の5回。先頭梅野に四球で出塁を許した。2死三塁とピンチを広げると、上本を直球で遊飛に仕留めガッツポーズ。難を逃れた。

 森監督は「いつも言っているけど、2人の鈴木君がいる。浜松で特にいい投球をしたけど、もう1人の鈴木君もいたかな」と評した。3回以降は毎回、四球を出し5四球。課題を完全には克服できなかった。それでも今季の目標にしてきた5勝まではあと1勝に迫った。この地を治めた浜松城は徳川家康が築き、17年間在位した。歴代城主が幕府の要職に就き、「出世城」とも言われている。浜松の地で育った右腕。出世の道をまい進する。【宮崎えり子】

 ◆鈴木翔太(すずき・しょうた)1995年(平7)6月16日、静岡・浜松市生まれ。小1から野球を始め、5年から投手。聖隷クリストファー(静岡)で1年夏から登板、2年夏県4強、3年夏は同8強。13年ドラフト1位で中日に入団。1年目の14年6月に地元浜松での西武戦で1軍デビュー。右投げ右打ち。183センチ、74キロ。