楽天の星野仙一球団副会長が4日午前5時25分に死去した。70歳だった。「闘将」と呼ばれた男は、熱くも優しい数々の言葉を残した。

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 11年8月27日ソフトバンク戦の前、星野監督は「今日はブルペンのみんなに試合を見せてやろう。疲れてるから。オレの隣にズラッと並んでな」と言った。中継ぎ陣はけげんそうにしていたが「田中さん、今日は1人で完封して下さい。お願いしますね今日は。よし、手を合わせよう。『神様、仏様、田中さま』って。ほら、みんなも」と、かしわ手を打った。

 冗談ではなかった。3回終了後、ブルペンに出向き「お~い。みんな。今日はもういいぞ。応援だ」と本当に撤収させた。考えられないほのぼのムードの中、意気に感じた田中は鬼気迫る投球。18奪三振で完封した。誇り高きエースも、ベテランも若手も、いつの間にか1つにまとめ上げる。言葉の力に満ちていた。

 獲得した外国人選手が活躍するのも忠誠心があったから。言葉こそ監督の最高の武器と自覚し、巧みに使った。早朝に起床すると個室にこもって新聞を精読。選手のコメントをつぶさに確認し、最適な言葉とタイミングを探っていた。

 時代時代の選手気質に見合った言葉を使った。いつも共通していたのは対する愛情。目線は強者でなく、低い方へ置いていた。厳しく叱った場合は同じ量のフォローをし、苦労人が活躍した場合は、ありったけの賛辞を並べた。好きなものを1つ挙げれば「人間」と答える。愛情が根底にあるから言葉が躍り、選手も踊った。【宮下敬至】