ヤクルト投手陣の「結束力」が、5連勝での2位浮上を演出した。

 5-6の8回、ヤクルトが絶体絶命のピンチに見舞われた。4番手で登板した中尾が先頭の陽岱鋼に中前打を浴びると、次打者の田中俊にストレートの四球を許し、大城の犠打後には代打阿部にもストレートの四球。1死満塁で、打席にはあと三塁打でサイクル安打達成の長野が入ると、場内からは逆転を期待する大歓声が起きた。

 一打逆転の危機。そこで名前をコールされた右腕は「勝利の方程式」の近藤ではなく、風張蓮投手だった。気迫十分の表情でマウンドに向かうと、長野を遊ゴロに仕留めて2死満塁。2番吉川尚も遊ゴロに抑えて無失点で切り抜けると、右こぶしを思い切り突き上げた。「1点差だったし、絶対に抑えてやろうと思っていました。いつでも気持ちの準備はしていました」と胸を張った。

 今季は中尾、近藤、石山の「勝利の方程式」が機能しているが、登板過多は否めない。この日は制球に苦しんだ中尾は今季43試合、守護神石山は40試合も登板。登板なしだった近藤だが、同42試合もマウンドに上がっている。連投辞さずで緊張感のある場面で奮闘する3投手の姿は、他の投手陣の心に焼き付いていた。

 ブルペン陣の総意を、風張が代弁した。「勝ちパターンの投手がシーズンで毎日抑えるのは難しいと思う。そういうピンチの時に僕らが抑えて、勝ちゲームに持ってこられるかが大事。久々に競った場面で投げさせてもらいました。そういう経験は、生かしていけるのかなと思います」。

 5-6と1点差に迫られた7回2死一、二塁では、中沢が亀井封じを決めた。16セーブ目を挙げた石山は休養日を挟んで5連投だったが「自分も絶対に点を取られてはいけないという気持ちだった。流れに乗せてもらいました」と感謝した。みんなの負担を軽くしたい-。お互いを思いやる投手陣の結束力で、巨人の猛追を振り切った。

 勝ちパターンではない継投を決断した首脳陣のベンチワークも見逃せない。小川淳司監督は「どうしてもこういう(競った)展開になると同じ投手の登板になる。使っていかないといつまでも使えない。中沢と風張がよく頑張ってくれた。絶体絶命のピンチだった。リリーフ陣なくして、この勝利はないと思っている。抑えるのは成長につながると思います」と、うなずいた。好調な打撃陣があきらめずに攻め、投手陣は必死に勝利のたすきをつなぐ。ヤクルトが固い結束力を武器に、混戦セ・リーグを戦い抜く。【浜本卓也】