大山よ、誠也に負けるな-。阪神は広島を上回る8安打を放ちながら打線がつながらず、今季5度目の完封負け。矢野燿大監督(50)は「4番の差」が敗因の1つと珍しく指摘。得点機で打ち取られた大山と四球を選んで3点先制につなげた広島鈴木を対比し、虎の主砲に奮起を求めた。主催試合の観客動員数が過去最速で100万人を突破した日に連敗で貯金を1に減らした。甲子園では8勝12敗の借金4と地の利を生かせない。

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最速100万人到達に花を添えられなかった。曇天の甲子園はため息ばかりで包まれた。1回の3点ビハインドを追う展開も、5回まで毎回安打を放ちながら得点できず。終わってみれば、今季5度目の完封負け。拙攻を問われた矢野監督は名指しした。「チャンスは作れている。かえすところがね。そういうところで、大山が打たんとダメじゃない? やっぱり」と厳しかった。

「4番の差」が響いた。3点を追う1回、先頭近本が内野安打で出塁し、2死二塁で打席は大山に巡る。ジョンソンにファウルで粘った末の8球目。懐に食い込むカットボールを強振したが、どん詰まりの二飛。8回も2死二塁でフランスアの速球に力負けの左飛。とらえきれず、得点できない。矢野監督は続ける。

「悠輔に全部、大きなチャンスが巡るわけじゃないけど、そこの働きがチームの勝ち負けに左右する。逆に鈴木誠也に、ウチは四球を与えてチャンスを作られているパターンも多い」

1回の攻防が象徴的だった。2死三塁でカープ不動の4番鈴木を四球で出塁させてしまう。西川3ランの伏線になった。指揮官が求めるのは4番の「顔」だろう。打席に立つだけで相手を威圧できるか。「打ってもらうことが一番だけど、そういう部分でね。明らかに自分の働きとは見えにくいかもしれんけど4番はそういう打順」。鈴木は大山と同い年だが、プロ入りは4年早い。今季も好調で試合前まで13本塁打のほか、打率や打点の3部門で上位に位置する。鈴木の充実は開幕から4番に座る大山の発奮材料だろう。指揮官の言葉は期待の裏返しでもある。

今季の主催23試合目で観客動員100万人を突破した。指揮官は「ゼロで終わるのは申し訳ない。たくさんの方に来てもらっているのは選手の頑張りももちろんあるし、球団もある。もっと来てもらうように俺らも頑張る」と気合を入れ直した。広島戦3連敗で、甲子園では、2カード連続負け越し。今季は本拠地で8勝12敗と借金は「4」。19日の第3ラウンド。主砲の一撃を待ちたい。【酒井俊作】