明大(東京6大学)が、ドラフト候補のエース森下暢仁投手(4年=大分商)の力投で38年ぶり6度目の日本一に輝いた。

先発し、佛教大(京滋)を7安打1失点に抑え、胴上げ投手となった。最高殊勲選手賞、最優秀投手賞を獲得。秋のドラフトへ向け、最速163キロの高校生右腕、大船渡・佐々木朗希投手(3年)と比較される中、完成度の高い即戦力右腕としての実力を証明した。

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リラックスして投じた105球目は146キロのストレートだった。空振りで38年ぶりの日本一を決めて、考えた。「一番高く跳ぼう」。リーグ戦優勝では捕手に飛び付かれて跳べなかった。「受け身だったので、今日は高く跳ぼう」。完封は逃したが、試合を作り、終える完投能力を発揮。「今日勝てば、明治野球部が幸せになると思ってマウンドに立った」。幸せを運んだ21歳は明るかった。

この日、ソフトバンクスカウトのスピードガンで最速155キロを計測した。ただ、森下は球速よりも、球質を追求する。

侍ジャパン大学代表スタッフも務める筑波大体育系准教授で川村卓野球部監督は、森下の特筆すべきはストレートとカーブで回転軸が一致する点と指摘する。通常は一致しない場合が多い。ストレートが速くても、カーブの回転軸が異なると見分けやすくなる。森下は回転軸が同じ。打者はリリースポイントでの見分けが難しくなり、緩急の揺さぶりに絶大な効果を生む。

投手としての総合力も高い。高校時代にショートをこなした運動能力が、俊敏な守備力に直結する。4回無死一塁でのバント処理は、普通の投手なら二塁封殺は厳しい場面だった。それでも迷わず二塁で刺した。

「僕は投手はピッチングだけという考えは好きじゃない。打撃も守備も走塁も、すべてで貢献したい」

そんなエース像を深く知る善波監督は、会見で鋭い振りを入れた。「ドラフトのこともしゃべったら。高校生に負けないんだろ?」。穏やかに笑う監督の内角球に、一瞬どきっとしながら「負けないように頑張ります」。意識する高校生を聞かれると「今、注目されている163キロの佐々木」と言い、すぐに「そんなに気にならないですけど」とニコッと笑った。

森下には大学で大きく飛躍した自負がある。勝つピッチングを模索し、今季の躍進がある。「4年は大事でした。4年で多くを学べました」。秋のリーグ戦、明治神宮大会、森下の目の前には、まだまだ実力を磨ける試練の場が広がる。あとは、誰よりも高く跳ぶだけだ。【井上真】

◆森下暢仁(もりした・まさと)1997年(平9)8月25日生まれ、大分県大分市出身。大分商では1年夏に背番号11で甲子園ベンチ入り(登板なし)。3年夏はU18W杯で10回を投げ無失点。明大ではリーグ通算13勝9敗、防御率2・78。大学日本代表では17年ユニバーシアード優勝、18年ハーレム国際大会優勝。180センチ、75キロ。右投げ右打ち。