DeNAドラフト1位の上茶谷大河投手(22)が、自身のバットで勝利をもぎ取った。

4回に楽天岸から値千金の決勝2点適時打。4時間7分に及んだ前日22日の乱打戦がウソかのように、テンポの良い投球で2時間52分の省エネゲームに貢献した。交流戦最終戦を6回無失点。自身4連勝で4勝目を手にし、リーグ再開へ向けて弾みをつけた。

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「坂本勇人さんをまねさせてもらっています。昔から好きなので」。上茶谷は、頭にインプットしてある連続写真の1ページを呼び起こした。0-0の4回2死満塁。前打者の大和が申告敬遠で巡ってきた岸との第2打席。期待を寄せるファンの大歓声は「聞こえていました」と集中を保ち、打撃フォームの1コマ、1コマを整理した。

左肘でタイミングを取るしぐさ、左足の上げ方、どれを取っても、巨人のスターとうり二つ。「三浦コーチから『1、2の3で行って来い』と言われたんですけど、ストレートを狙ったら、チェンジアップで。ストレートだったら振れなかった」と“まさか”のタイミングで、左前へ決勝の2点適時打を決めた。

フォロースルーまで、そっくり。特訓が生きた。幼い頃、父篤史さんから度々プレゼントされたのは参考書ではなく、野球雑誌。打撃フォームの連続写真が載ったページを読むことが日課だった。「ソフトバンクの内川さんや、ロッテの井口監督。いろんな人のまねをしていましたね。でも、なかなかおやじから合格が出なくて。やっとOK出たと思ったら、次は誰、次はこの人って」。坂本勇もその1人。1月のDeNA本社訪問で、南場オーナーにロペスのモノマネを披露できたのも、実家に山積みされた雑誌のおかげだった。

「球界を代表する投手なので」と恐縮しながらも、岸のお株を奪う打撃を披露。6回6安打無失点で投げ合いも制した。武器であるカットボールでコースを突き、4回以降は得点圏に走者を進めなかった。交流戦最後の一戦を自身4連勝となる4勝目で飾ったルーキーだが、「投げ勝ったとは思っていない。まだ直球も高めだったし、岸さんの方が三振も多い。野手の方に助けられた勝利」。連続写真を見るかのごとく、さらなる飛躍のための分析に努めていた。【栗田尚樹】