元中日監督で日刊スポーツ評論家の山田久志氏(71)が、今年もオフ企画の『球論』で健筆を振るいます。阪急で通算284勝を挙げた最強サブマリン、09年WBC投手コーチで世界一を遂げたレジェンド。球界きっての論客が野球界の話題を掘り下げます。

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日刊スポーツ読者のみなさま、新年おめでとうございます。2020年最初の「球論」はオリックスです。今季は“投手王国”を築き上げる年です。

昨年は金子が日本ハム、西が阪神に移籍して不安視されましたが、ちゃんと若手が出てきた。山岡泰輔が最高勝率、山本由伸が最優秀防御率のタイトルを取る大活躍でした。

まずは「3本柱」を確立することでしょうね。山岡、山本、それから田嶋大樹…。19年は左肘のこともあって不調(3勝4敗)だったが、今年はやってくれるはずです。

昨年10月のみやざきフェニックスリーグで、田嶋は他を圧倒したらしい。そこでわたしは球団関係者に「シーズンオフになってもできるだけ休ませない方がいいよ」と進言しました。

今年2月の春季キャンプで再び肩、肘作りから始動するより、常にキャッチボールだけはしておいたほうがいい。一人ならネットに向かってでも。いいイメージを保ったままキャンプに入ってほしかったのです。

山岡はタイトルを取ったが「エース」と認めてもらうには、シーズンを通して安定した成績を残してほしい。1本立ちしそうなレベルにきた山本には、日本を代表する投手を目指してほしい。

馬力のある山本、田嶋に、山岡の3人がローテーションを守り抜けば、チームは互角に戦えますよ。「エース学」をたたき込んでいって、だれかがその座をつかんでくれないかなと期待してるんです。

さらに、榊原翼、K-鈴木、荒西祐大、張奕ら伸びしろを感じる人材がいます。“投手王国”を築く下地作りはできつつあるから、あとは彼らをどうやって教育し、引き上げるか。

今季は高山投手コーチがヘッドに、投手部門のスタッフは、ベンチに平井、ブルペンが小松という新体制で臨むことになって、ここにも期待したいですね。

ベンチとブルペンをつなぐホットラインは命綱。オリックスブルーウェーブ投手コーチで95年からパ・リーグを連覇し、96年に日本一になった当時は、ブルペン担当のタカシ(山口高志氏)に助けられた。そこにはツーカーの呼吸が大切です。

今年も2月の宮崎清武キャンプに臨時コーチに招かれました。もう5年目になります。選手への口出しは最低限で、向こうから聞いてくるような雰囲気になればいいなと考えています。

逆に、わたしが気付いたことは積極的に1、2軍コーチに伝わるようにしたい。現役時代、指導者としての経験を交えながら説くことできればと思っているし、オリックス投手王国誕生の一助になりたいですね。