快音止まらぬバットで花道を-。楽天鈴木大地内野手(31)が13日、日本ハム戦で同点打を含む2本の適時打で4打点をたたき出した。

この日引退会見を行った渡辺直人内野手兼1軍打撃コーチ(39)の節目の日に迎えた試合で、2連勝をたぐり寄せた。両リーグではDeNA佐野に次ぎ、パ・リーグでは最速で100安打に到達。9年目で自己最多安打ペースで打ちまくり、逆転優勝まで駆け上がる。

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直人さんのために、打ってやる。鈴木大が歯を食いしばった。6点を取られた直後の2回、3点を追う2死満塁。カウント3-1から日本ハム有原の真ん中高め148キロに、短く持ったバットを目いっぱい振り抜く。右中間フェンス手前へ走者一掃の同点適時二塁打。「直人さんに打たせてもらいました」。頭上で手をたたくベンチの渡辺直へ、二塁上で右拳を3度振り、応えた。

人望の厚さに引き込まれた。昨オフ、ロッテから加入し出会った。声をかけてくれ、新天地にすんなりと、とけ込めた。「1年もたってない付き合いですけど、すごくお世話になっています」。今春キャンプ。自身より9歳上、野手最年長の先輩が誰よりも声を出し、元気に、楽しく動き回っていた。「選手やファンから慕われている姿を見ると、僕もこういう野球人みたいになりたいなと思う」。自然と背中を追った。

苦しい時も前を向く。数字が貢献度を物語る。7回にも適時二塁打。今季30度目のマルチ安打でリーグ最速で100安打に到達。開幕から全73試合にスタメン出場し8月は球団月間最多安打記録を更新する41安打。12度の猛打賞も記録し、昨季マークした自己最多153安打を120試合シーズンでも上回る、164安打ペース。無安打試合は15。うち5試合で打点を挙げ、出塁なしは5試合のみ。不可欠な存在だ。

停滞感を打ち破る。6月は7勝3敗で飛び出したが、7月は借金1、8月は5割と勢いに乗れない。9月も黒星が1つ先行。首位ソフトバンクへ6・5ゲーム差も、まだ47試合を残す。「1年やっていたら苦しい時は絶対にある。直人さんが引退されることで、より一層結束していくしかない、と思いになっている。何とか笑顔で送り出せるように頑張りたい」。直人さんのために、打ちまくってやる。【桑原幹久】

▽楽天藤田 横浜、楽天でプレーできたことは僕にとってすごい財産。ダメなものはダメと叱ってくれる人なので、僕も成長することができました。直人さんのためにもみんなで優勝したいです。

▽楽天岸(西武でも4年間ともにプレー) 西武の時から8年間、いろいろなことがあった。公私ともにお世話になって、心の支えになる兄貴みたいな存在でした。

▽楽天久保(松坂世代の1人) 寂しい。人として野球人として心から尊敬している。優勝して花道を飾ってあげられるように全力を尽くしたい。