「ハマの宇宙人」なら奇跡を起こせるかもしれない-。DeNA井納翔一投手(34)が首位巨人との3連戦初戦に先発。6回2安打無失点の快投で6勝目をマークした。

プロ入り直後から奇想天外な発言、行動を連発し「宇宙人」の愛称で親しまれてきた。わずか78球での降板理由は「ホットクリームを塗りすぎた」と珍回答。予測不能な大型右腕が、11ゲーム差で追う巨人の独走に待ったをかける。

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大量6点リードの井納に異変が起きた。6回先頭の代打立岡にストレートの四球を与え、どことなくボールが先行する。2死三塁までこぎ着け、パーラを147キロ内角直球で二ゴロに打ち取った。無失点で乗り切り意気揚々とベンチに引き揚げるかと思ったら、右肘をさすり、表情を曇らせる。心配そうにトレーナーも駆け寄る。7回の打席で代打を送られて降板。スタミナ型の大型右腕が78球でマウンドを譲った。

チームトップタイの6勝目を挙げ、勝ち頭にアクシデントか。ラミレス監督は「いや、まったく問題ない。そういうことをするのが井納なので。『2軍に行くか?』って聞いたら『大丈夫です』と。そんな感じだった」。クエスチョンマークが宙に浮かぶ。井納本人が詳細を言及した。「5回に着替えたんですが、ホットクリームを塗りすぎてパーラのときに耐えられなくて腕が動いてしまった」。なんとも紛らわしいしぐさも、なぜか井納がゆえに愛らしい。自身プロ50勝目の節目はウイニングボールの話題まで届かなかった。

今季は「プレゼント王子」の異名も持つ。7月9日広島戦で2勝目をマークすると「10日は石川(雄洋)の誕生日なので、同級生でもあるし、お互いに1年でも長くやりたいというのもあるので、石川に渡そうと思います」。8月4日中日戦での3勝目は「2軍で頑張っている細川が誕生日なので、細川にプレゼントしたいと思います」。プロ野球選手がプロ野球選手にウイニングボールを贈るという異質なピュアストーリーを平然と敢行してきた。

実用的な備品もプレゼントしている。5勝目を挙げた8月27日広島戦のヒーロー賞で冷蔵庫が贈呈された。「キャンプ前に新しいのを買ったので母親にあげようかと思っています」と話していたが、気をよくしたのか「ブルペンの冷蔵庫が小さくて古いようなので、新しくプレゼントします」と自腹を切って追加購入した。「中継ぎの負担が多い試合が続いている」と地球人、日本人らしくチームの和を重んじる。この日は、ヒーロー賞で有機ELテレビをゲット。次はだれにプレゼントするのか。

登板前に決意を記す「マウンド作文」。マウンドとベンチの行き来は走らず平然と歩く「井納散歩」。巨人坂本のバットを完全コピーした「翔一モデル」。こだわりがあるのか、ないのか、よく分からない。首位巨人の背中は遠い。1強のセ界が続けば、ペナントレースの火が早々に消える。「ハマの宇宙人」には想像を絶する奇跡を期待してしまう。【為田聡史】

▽DeNA倉本(2回1死二、三塁で先制の右前2点適時打) 中井さんがバントでつないでくれて、いい流れで打席に入ることができた。

DeNA梶谷(5回に12号ソロ) うまく風に乗ってくれた。