「浅村様」の1発を引き出した「涌井様」は、大雨にも動じないのか…。「プレーボール!」を球審がかける直前、その10分前から降り出した雨が強まった。両軍ベンチに下がり、グラウンド土部分にはシート。「遅延には慣れているので。まだかなまだかなと」。約20分後。雨脚が弱まり始めたことを確認し、始動。午後6時37分に試合が開始した。「ぬかるんでいたのは5回だけなので」と初回から2奪三振。あっさりと3者凡退で立ち上がった。

海の向こうからの授かり物も力を発揮した。「今日は真っすぐがよかった」と105球中53球を「ダルビッシュストレート」が占めた。昨年夏頃、同学年のカブス・ダルビッシュにフォーシームの握りを伝え聞き、手応えをつかんだ。「もう自分の球はなくなってくるね」と笑うように、今春キャンプで小山投手コーチから教わった「こやシン」こと高速シンカーに、オリックス山岡から聞き7月15日西武戦から投げ始める「山岡スライダー」。“秘球”が好投を支える。

6回には福田秀にカーブ、マーティンに「こやシン」を打たれ3失点。追いつかれたが「真っすぐを信じていきました」と安田を4球連続の「ダル-」で押し込み左飛。同点のまま7回を投げ終えると、直後に浅村が決勝2ランを決めた。お立ち台で「明日から『浅村様』と呼ぼうかな」と白星を呼び込んだ後輩をたたえた。

開幕8連勝を達成した8月19日日本ハム戦以来5戦ぶり、約1カ月の白星。「ようやくちょっと体調が戻ってきた。前半戦のような連勝ができれば」。勝利の神様は「涌井様」にも、ほほえんだ。【桑原幹久】