悔しさを力に変えた。前日1日の試合で走塁ミスを犯した楽天辰己涼介外野手(23)が、8回に試合を決めるバックスクリーンへの7号3ランを放った。最近はスタメンを外れることも多く、安打自体が9月9日以来。もがき続ける18年ドラフト1位が、久しぶりに実力の片りんを示し、直近6試合で1勝5敗だったチームを救った。

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左対左でも関係ない。先制直後の8回2死二、三塁。辰己が左腕富山の145キロ真ん中高め直球を完璧に捉えた。打った瞬間にそれと分かる大きな放物線を描いた打球が、中堅手のはるか上を越えていった。「先月29日に誕生日だったお母さんおめでとう」。勝利を引き寄せる7号3ランは、母洋子さんへの最高のプレゼントだった。

リリーフに再転向した松井が、前日1日のソフトバンク戦で1点リードを守りきれず敗戦投手となった。その松井が、この日も7回途中から登板。見事ピンチを脱し、直後の辰己の本塁打などで勝ち投手となった。「投」でやり返したのが松井なら「打」で意地を見せたのはまぎれもなく辰己だ。

このところスタメンを外されることが多く、1日の試合では代走で出場。しかしソフトバンク嘉弥真のけん制に飛び出し、二塁でタッチアウトとなった。その翌日に放った汚名返上の1発に「最近、打撃も走塁も守備も足を引っ張ってばっかりだったので。久しぶりにチームに貢献したいなと思って」と会心の笑みを浮かべた。

「自分の力で何とかスタメンに返り咲けるように、またチームに貢献できるように頑張りたい」という辰己に対し、三木監督も愛情のこもったエールを送る。「僕の求めるものは多いので。今日のことは良かったですけど、そこでホッとしないで。勉強、成長の繰り返しだと思うから。試合でいろんなことを学んでほしい」。

復活の兆しを見せたのは辰己だけではない。主砲浅村は8回に好機を広げる右二塁打。これも実に29打席ぶりの安打だった。活躍すべき選手たちが徐々に調子を取り戻せば、残り30試合でも、まだまだ戦える。【千葉修宏】

▽楽天三木監督(8回に3ランを放った辰己に)「昨日(1日ソフトバンク戦)走塁で失敗して。何とか結果を出して取りかえそうとする姿勢。危機感とか緊張感があの打席で出た」