運命の日から1年。杜(もり)の都で、成長の跡を残した。楽天ドラフト6位の滝中瞭太投手(25)が日本ハム打線を7回1安打無失点に抑え、プロ2勝目をマークした。得意球カーブに加え、小山投手コーチ、涌井から教わった「こやシン」を有効活用。味方の援護、好守にも背中を押され、三塁をも踏ませぬ力投。滋賀から仙台へ駆けつけた両親へ晴れ姿を届けた。

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374日前。滝中はホンダ鈴鹿の寮の自室で、その日に届いた楽天ゴールドカードへ夢中になっていた。楽天ドラフト6位指名。同僚の声で朗報を知り、プロの世界に飛び込んだ。「本当に早かったです。あっという間の1年でした」。コロナ禍をくぐり、ファームで鍛錬を重ねた。昨年のドラフト会議から374日後。地元滋賀から仙台へ駆けつけた両親の前で躍動した。

先輩から受け継いだ“秘球”が重宝した。4回2死一、二塁。日本ハム清宮を外角低めの“こやシン”こと134キロの高速シンカーで泳がせ、一ゴロに打ち取った。元祖の小山投手コーチに春季キャンプで教わり習得を試みるが「勇気がなかった」と実戦では使い切れていなかった。それでも、オリックス戦登板前日の3日。今季から同球種を操る涌井にこつを教わり「絶対投げろよ」と背中を押してもらった。「カーブの状態がいいとは言えなかったので」と3回までは得意球を43球中4球にとどめ“こや-”を活用。7回まで三塁を踏ませなかった。

周囲のサポートも後押しになった。1回2死二塁で中田の左翼フェンス際の打球を左翼手ロメロがキャッチ。3回にも先頭樋口の右翼フェンスを越えそうな飛球を同学年の右翼手田中和がジャンプ一番“ホームランキャッチ”。さらに7回にも先頭渡辺にも直球を強振されたが、この回から二塁についた藤田が横っ跳び。幾度の好守に「野手の方に本当に助けてもらいました」と感謝が尽きなかった。

お立ち台。白球からマイクへ握り替え、思いを伝えた。「やっと2人に渡せると思います。(両親が)今日来てくれているので、気をつけて帰ってほしいです!」。つかんだ2個目のウイニングボール。故郷へ戻る両親へ、これ以上ないプレゼントを贈った。【桑原幹久】