アデイニー・エチェバリア内野手(32)の勝ち越し3ランが最終回に飛び出し、ロッテが3位に再浮上した。

打った瞬間だった。同点の9回2死一、二塁。ソフトバンク岩崎のフォークを完璧に捉え、無観客のドームに快音が響いた。

鋭い打球は4秒半とかからずに、左中間スタンドに着弾音を響かせた。二塁走者の代走和田康士朗外野手(22)はインパクトの瞬間に、いつものように全力で駆けだした。エチェバリアがポーンと軽く上に投げたバットが地面に落ちるころには、もう三塁手前まで来ていた。勝ち越しのホームを踏んだ時、ヒーローはまだ一塁の手前を悠然と走っていた。

「それまで3打席とも三振に終わったので、どうにかしよう、僕が決めてやろうという気持ちで打席に立ち、本塁打という結果が出て本当にうれしいよ」

ミーティングでも警戒していた、ソフトバンク・マルティネスの緩いチェンジアップ。「予想以上に精度が良かった」(井口監督)という中でエチェバリアも3打席目まで全て三振だった。最後にこの上ない仕事をした。

「このチームで少しでも長くプレーできるよう頑張っていきますし、まだ1年目で慣れていない部分もありますが、もっと慣れて、チームの勝利に貢献できるように頑張りたいです」

1つ1つの成果で、より日本野球にアジャストしていく。レアードもマーティンもそうだったように。

首位追撃の立場で競るソフトバンクに、まず1勝した意味は大きい。レアードの分厚い拍手が何度もドームに響く中を1周した。ゆっくりとホームに戻ってくると、殊勲の男もパーンと大きく両手を合わせ、天に感謝を示した。【金子真仁】