阪神岩田稔投手(37)が1日、兵庫・西宮市内のホテルで現役引退会見を行った。

母校の恩師、大阪桐蔭・西谷浩一監督(52)は心からねぎらった。「大あっぱれと言いました。『強さを感じない強さ』がある。穏やかな顔に隠れた強さです。その芯の強さがなかったら、病気を抱えながらプロでこんなにやれないと思います」。

高校2年の冬に1型糖尿病を発症した教え子に、就任したばかりの青年監督も無我夢中で寄り添った。「監督になったばかりでしたし、その時は病気の知識もなくて、どうしたらいいのかと。とにかく練習が終わったら毎日ユニホームのまま、岩田の病室に行きました。どうだ? とか、練習の話をして30分くらい。その後は先生に病気について聞いていました」。西谷監督は今の選手たちに、よく伝えていることがある。「諦めたら、終わり。こんな先輩がいるよ…」。岩田の生き様は、今も後輩の道しるべだ。

毎年、春夏の甲子園に出場すれば、岩田は自ら宿舎に出向き差し入れをしてくれた。「律義な性格です。必ず直接来てくれて、それも岩田らしいです」。今年の夏は教え子がもらした言葉を聞き、引退が近いのかもしれないと悟った。「遠征に行くことも減って、戦力外になるかもしれない、と。できるだけやったら、と言いました。寂しいですけどね」。

高校時代に困難に直面した教え子は、想像を超える強さと努力で夢をつかんだ。「一区切り、まずはおつかれ様と言いたいです。ここからの人生の方が長いので、これからも岩田らしく頑張ってほしい」。今後も続く人生を、温かなまなざしで変わらず見守っていく。