日本ハム上沢直之投手(27)が意地のV逸阻止だ。中11日で先発したオリックス21回戦(京セラドーム大阪)で7回3安打1失点と快投。負ければ5年連続でパ・リーグ制覇の可能性が完全消滅する試合でチームを白星に導いた。これでシーズン自己最多タイの11勝目となり、3年ぶり2度目となる規定投球回にも到達。エースがチームのかすかな希望をつないだ。

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エースとして、上沢は目の前の試合を必死に勝ちにいった。「どの試合でも勝ちたいので」。負ければV逸という瀬戸際でも、与えられた仕事に集中した。2点リードの7回2死。モヤへの初球、107球目はこの日の最速タイとなる151キロを計測。ボールとなったが、球威十分の1球の次は131キロのスライダーで一ゴロ。「緩急を使ってタイミングを外せたのが良かった」と7回1失点でまとめた。

中11日でも理想に近い投球は不変だった。9月24日ソフトバンク戦(ペイペイドーム)の翌日に登録を抹消され、積極的休養に努めた。最初の3日間はノースロー。投球も「本当に最低限ですね」とキャッチボールでバランスを確認する程度だったが、「感覚はズレなかった」。完全に身についた、力感なく、無駄を省いた極上のフォームから繰り出すボールの力強さは、やはり圧倒的だった。

リフレッシュ期間中には思わぬ発奮材料もあった。前回登板で10勝目を挙げた投球に、巨人やメジャーで活躍した上原浩治氏(46=日刊スポーツ評論家)がツイッターで反応。「自分が理想とするフォームだなぁ」などと絶賛する内容を投稿した。上沢は「あんな有名な方に僕のことを認知してもらえただけで、ありがたい」と感動。サッカー少年だった小学生時代には上原氏の下敷きを使用していたという。「褒めてもらえてうれしい」と、心躍る出来事だった。

褒められたフォームから、この日も最速151キロの直球と多彩な球種を駆使して相手打線を牛耳った。これで自己最多タイの11勝目。3年ぶり2度目となる規定投球回にも到達したエースは「やっぱ1年間投げている以上、そこは絶対にクリアしないといけないと思っていた」と頼もしい。そして「僕らは1つずつ上を目指したい」と言った。どんな状況でも、最後まで勝利のために右腕を振る。【木下大輔】