ロッテ東妻勇輔投手(25)は思う。「中継ぎ投手って、10回抑えても1回打たれたのがすごくイメージに残っちゃう場所だと思うので」。その通りの1球になってしまった。

11月11日、京セラドーム大阪でのオリックスとのCSファイナル第2戦。6回2死一塁で、救援のマウンドへ。その初球を、オリックス杉本に決勝2ランにされて敗れた。甘いスライダーだった。

「もう、めちゃくちゃ投げミスです」

前日10日は1点ビハインドの8回1死で登板し、同じ杉本にスライダーを続け、空振り三振を奪っていた。

「前日にいい形で三振を取れてるのは僕もイメージにありましたし、向こうもたぶんすごくイメージがあったと思うので、スライダーに張って振ってくるか、見逃してくるかと思っていました」

いずれにしても、スライダーの使い方が鍵を握る勝負だった。東妻は決めていた。「絶対にストライクゾーンじゃなくて、ワンバウンド(のスライダー)から入ろうと」。走者がいても、加藤匠馬捕手(29)のキャッチングを信じて、ワンバウンドを投げた…つもりだった。

先発で好投する美馬学投手(35)が直前に打球を足に受けての、リリーフ登板だった。「もともと、何かあったら右の強打者といったところでいくぞと言われていたので、早い回から準備はしていました」と、決して準備不足ではなかった。あまりにも痛い本塁打になった。

「ゾーンは入ってもいいんで、ワンバウンドにしようという気持ちで投げて、あのボールなので…。自分の技術のなさがすごく露呈した場所かなと」

プロ3年目、確実に前進した1年だった。6月ごろ、ブルペン陣の先輩である田中靖洋投手(34)からの勧めもあり、ツーシームの習得に着手。ゴロを打たせるスタイルで併殺を取り始め、何度ものピンチを救ってきた。「夏過ぎくらいはすごく調子が良くて、そこそこ抑えられたと思うんですけど、一番大事な優勝争いの時に大量失点してしまったり、一番大事な場面で打たれたり」。経験を重ねるごとに、冒頭の言葉の意味も重くなってきた。

郷土和歌山の先輩でもある益田直也投手(32)の背中を追う。「(背中が)離れていかないように」と、チームの守護神を必死で追う。来季は50試合登板を目標にする。そのためにも。

「どうでもいい場面なんてないと思うんですけど、特に一番大事な場面を投げミスをしない。投げミスしたとしても大事故にならないところに投げられる技術を、しっかりつけていきたいと思います」

悲鳴の1球を糧にする。【金子真仁】