ロッテ西野勇士投手(30)は「去年の6月でしたっけ、手術は」としみじみ話し出した。

記憶通り、20年6月29日に右肘のトミー・ジョン手術を受けた。一般的に実戦復帰は1年から1年数カ月後といわれている。結局、公式戦で2年間、未登板に終わった。2月の石垣島キャンプでキャッチボールを行っていた西野の実戦復帰は、今年10月のフェニックス・リーグだった。

【関連記事】ロッテニュース一覧

「自分の希望としてはもっと早く復帰したかったし、できると思っていましたが。ちょっと長引いたかなというところはあります」

優勝争いするチームを気にしながらも、万全な感覚が戻っていなかった。不安は決してゼロではないものの「去年の契約更改でも、そんなに無理する必要はないと言われていたので」とじっくり進めた。

フェニックス・リーグも「リハビリの1つ」という認識で投げ、直球は140キロ台前半だった。ただ、我慢したかいはある。上向きを感じる。「フェニックスから帰ってこの2か月間、肘の状態はかなりいいと思っているし、感覚はすごくいいので」。13度目のシーズンオフ。「今までのオフの中でも、一番いい状態で投げられているんじゃないかなと感じています」と表情も声色も明るい。

手術前の昨季オープン戦はチームトップ級の安定感を誇り、開幕での先発ローテーション入りが確定していた。不在の間に佐々木朗が台頭し、小島や岩下も伸びた。戻る場所の保証がないのは分かっている。

ただ、決して置きには行かない。

「若い選手に負けないように。先発争いの起爆剤になれれば。そういう存在を脅かすような」

働き盛りの2年間を費やして、体を戻した。思いは人一倍だ。【金子真仁】