え? 阪神藤浪が打撃投手? 日本ハム新庄剛志監督(50)が2日、主力候補が占める沖縄・名護キャンプのBIG組を初指導した。打撃練習では、BIGBOSSの一声で導入が決まった総額500万円のバーチャル投球マシンで、打撃強化に乗り出した。この日は、臨時コーチ集団「新庄殿の8人」の先陣を切って“百獣の王”武井壮氏(48)が走り方の指導にあたるなど、通常の練習日も見どころ満載だった。

【関連記事】日本ハムニュース一覧

マウンドに現れた“難敵”の前に、日本ハム各打者のバットは次々と空を切った。バーチャルの阪神藤浪との、ガチンコ勝負。“仕掛け人”の新庄監督は「(対戦相手を)藤浪君にしたのは『藤浪くんが打てたら誰でも怖くないだろう』という意味で(打撃マシンの映像に)設定させてもらった」とニヤリ。実戦の雰囲気を体験できる豪華マシンに、選手の目の色も変わった。

この打撃マシン「藤浪くん」は、スポーツバラエティー番組でも使用されている最新型。本体と投手映像機器を合わせて500万円ほどで、今回、新庄監督の希望で導入された。球速は監督の要望通り、140~145キロに設定。「本当はね、メジャーのランディ・ジョンソンとか、ペドロ・マルティネス(の映像)をセッティングしてくれって(メーカーに)言ったんだけど、メジャーの映像は使えないと言われたので…」。その代わり、藤浪のほか、開幕戦で対戦の可能性があるソフトバンクの速球王モイネロ、阪神で現役時代にマウンドに上がった投手新庄と、3種類の投球映像を用意した。

さすがに「オレの映像はボケ」と照れ笑い。「オレだけ(本業が)ピッチャーじゃないから(腕の振りが遅くて)全然(映像とボールの出だしが)合わないの」。どうやら、自分の投球映像だけは、使えるシロモノではなかったようで…。「でも、明日、見せます」と、楽しげに予告した。練習に工夫を凝らして、選手を飽きさせないのがBIGBOSS流。「『練習も試合のように振れ!』と。振り出してからは、打球の勢いがすごい、すごい。レベルが違う。後ろで見ていて、めちゃくちゃ、うれしくなりました」。手に取るように変わっていく選手の姿が、BIGBOSSの“ヤル気”を、ますます刺激する。【中島宙恵】

◆バーチャル投球マシン 株式会社キンキクレスコ(本社大阪・池田市)が製造販売。名称は「ユーティリティーエース」。150キロ近い速球が可能で、さらにカーブ、スライダー、フォークも投じる。変化量をカスタムできるため、思い通りの投球が可能。過去には15年のオリックスが春季キャンプで、前年に苦戦したソフトバンク大隣、日本ハム上沢、楽天則本の映像で導入した。巨人も16年から屋内施設「木の花ドーム」の一角に設置し、このときにも阪神藤浪が“登板”している(現在は置かれていない)。

◆新庄監督現役時代のオープン戦登板 99年3月5日、当時阪神の外野手だったBIGBOSSは、巨人とのオープン戦の4回にマウンドへ。全て直球で元木(現ヘッド兼オフェンスチーフコーチ)を二飛に打ち取ると、続く二岡(現2軍監督)にはスライダーを交え遊ゴロ、さらに後藤(現3軍打撃コーチ)を中飛に仕留めて3者凡退に抑えた。最速は143キロ。ただし直球と変化球で明らかに腕の振りが変わるという二刀流挑戦時からの課題は解消されておらず、試合後は「向こうが打ち損じたんでしょう」と浮かれたところはなかった。同月21日ダイエー戦での2度目のマウンドで松中に137キロ直球を右中間スタンドへ運ばれ、以降は登板機会が訪れることはなかった。

○…武井氏の講義の中で、新庄監督は「練習し過ぎて疲労がたまった時の対処法は、どうするんですか」と質問した。選手と一緒になって、積極的に参加。臨時コーチ集団「新庄殿の8人」のトップバッターによる1軍の指導が終わり、「今日は、いい1日」と満足げ。「今度は、違う箇所とか意識をさせるプロフェッショナルに何人か来てもらう。野球選手…OBじゃない方が、選手って飽きない」と予告した。

○…杉谷が「藤浪くん」に悪戦苦闘した。このピッチングマシンは、テレビ朝日系「とんねるずのスポーツ王は俺だ!!」の恒例企画「リアル野球BAN対決」で使用されているものと同タイプ。ただ、今オフは新庄監督からバラエティー番組出演NGが通達され、過去5度参加していた同番組の出演も断念していた。思わぬ形で対決チャンス? が巡ってきたが、この日は9球で安打性はなし。「ものすごく速かったです、思ったより。プロ野球のキャンプで初めて、ああいう画像が出た練習をしたので新鮮な気持ちで打席には立てた」と振り返った。

○…阪神藤浪は日本ハム新庄監督の“挑発”にも一切動じることはなかった。沖縄・宜野座での練習後に取材に応じ、自身の姿が映し出されたピッチングマシンの記事を「見ました」とチェックしていたが、「だから何ですかと。別に何とも」と苦笑い。藤浪は5日の紅白戦(宜野座)に登板する予定で、順当に行けば11日の日本ハムとの練習試合(名護)の登板が見込まれる。敵地で“リアルBIGBOSS斬り”だ。