阪神矢野燿大監督(53)の「迷采配」で対左腕10連敗を喫し、バンテリンドームの5年連続負け越しが決定した。陽川尚将内野手(31)を起用するために、主軸を張る大山悠輔内野手(27)を2年ぶりに右翼で先発起用。試合途中には佐藤輝明内野手(23)をプロ入り初めて二塁の守備に就かせた。苦手左腕の大野雄への窮余の策も実らず、2得点だけ。Bクラス転落も見えてきた。

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虎党の頭にクェスチョンマークが浮かんだ。「5番、ライト、大山」-。試合前のアナウンスで、バンテリンドームのファンがどよめいた。一塁、左翼を守ってきた「不動の5番」の守備位置を変更。大山の右翼での出場は20年10月21日広島戦(甲子園)以来、2年ぶりだった。そこまでして右打者の陽川を7番一塁でスタメン出場させたのだ。試合後、矢野監督が悩ましげな表情を浮かべてその意図を説明した。

「まあまあ、左(投手)で点取れないんで。何かそういう方法はないかなっていうところで、まあね、ずっと一緒でやっても変わってこないんで、そういうことで変えてもいいんじゃないかなってことで」

窮地の“奇策”だった。なかなか左投手から白星を奪えない。この日は6回に期待の陽川が2点適時二塁打を放ったが、結局、得点はこの2点だけ。これで相手先発が左腕投手の試合で今季21勝29敗、10戦連続で黒星となった。中日大野雄を相手に6回途中7安打2得点。首脳陣にとっても苦肉の策だった。ただ、今季も右翼スタメン経験のある陽川がなぜ一塁だったのか? その疑問は試合後も残った。

試合終盤にはさらにポジションをシャッフルした。大野雄が降板した7回には二塁糸原をベンチに下げた。大山を一塁、陽川を三塁、代打島田を右翼とめまぐるしく守備位置を入れ替えた。さらには佐藤輝を公式戦初の二塁守備に就かせたが、不安定さは明らか。勝利に執念を燃やしたが、反撃につながらず敗戦。バンテリンドームでの5年連続負け越しが決まった。

「むちゃくちゃはできへんけど。点取らないかん、追いつかないかんというところでは、それもオプションの中でやっていく時もあるのかなと思う」

今後の守備起用を問われた指揮官は、そう答えた。慣れないポジションでは、選手も地に足をつけて戦えない。シーズンは残り24試合。首位ヤクルトとは11ゲーム差に広がった。そして、27日の中日先発は左腕小笠原。振り向けば4位巨人が1ゲーム差で迫っている。【桝井聡】

◆佐藤輝の二塁守備 今季のオープン戦、3月12日中日戦(甲子園)に4番・二塁でフル出場した。4回表1死一塁では、ビシエドの三ゴロで二塁ベースに入り、そつなく併殺を完成。3度のゴロもきっちり処理した。佐藤輝は「少年野球も含め、人生初です」という守備位置に目を白黒。矢野監督は「1年間は長い。いろんなオプションをやっておく必要があるのかなと」理由を説明した。なお大山が右翼の守備についたのは、20年10月21日広島戦(甲子園)に4番・右翼で先発して以来プロ2度目。

▼阪神はバンテリンドームでの中日戦の今季負け越しが決まった。ナゴヤドーム時代の18年から5年連続という屈辱だ。今季の同球場でのチーム打率1割8分1厘、平均得点1.8点はいずれもセ・リーグ球団本拠地別最低。

▼阪神は、相手の先発投手が左腕だった試合で10連敗となった。これは16年6月15日オリックス戦松葉~7月20日巨人戦田口の10連敗以来。

○…佐藤輝はプロ初の二塁守備をなんとかこなした。7回裏から就き、無死一塁で小フライにダッシュで追いつきキャッチ。その後、1死一塁で溝脇の二ゴロを捕球し、二塁へバックトス。三塁方向へ乱れ、併殺が取れなかった。3月12日の中日とのオープン戦で「人生初」の二塁守備に就いており、「オープン戦でもやりましたし、何があるか分からないので、これからもしっかりと自分にできる準備をしていきたいと思います」と冷静に言った。打席では6回、3試合ぶりの安打となる左前打で出塁も、7回2死二、三塁では左飛。ここぞで1本が出なかった。

▽阪神井上ヘッドコーチ(大山の右翼、佐藤輝の二塁起用に)「もちろん慣れてない位置をなんでやらせてるねんってなるかもしれない。輝明のセカンドは、途中から投手を入れるとかの絡みがある。適当にやっているのではなく、苦肉の策というところ。今日は陽川を使いたかったから(ロハス)ジュニアの右翼より悠輔の方がいいという結論。いい左投手と当たる中、点数をたたき出す打者が打てない。左アレルギーと言われるけど、選手たちにはそんな意識はさせたくない」

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