「2022 JERA クライマックスシリーズ セ」ファーストステージ第1戦のDeNA戦(横浜)で、阪神矢野燿大監督(53)が勝負手を打った。2点リードの8回にレギュラーシーズンの守護神・岩崎優投手(31)をマウンドへ。2死一、二塁のピンチが残ると「8回の男」だった湯浅京己投手(23)を投入。湯浅は度胸満点の回またぎ火消しを果たし、逃げ切った。CSファーストSで初戦を取れば突破率は84%。息詰まる投手戦を制し、ファイナルステージ進出へ王手をかけた。

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絶体絶命のピンチでも、湯浅は落ち着き払っていた。2点リードの8回に本来守護神の岩崎が登板したが自らの失策もあり2死一、二塁のピンチを招いた。4番牧を迎えたところで矢野監督がさらに動く。指名したのは背番号65だった。「いつも通り、自分のやることをやるだけ」。物おじすることなく腕を振り下ろすスタイルは大一番でも変わらない。カウント2-2から最後は外角フォークで空振り三振斬り。右拳でガッツポーズを繰り出してベンチへ駆けた。傾きかけた流れをグイッと引き戻した。

「ヒットも打たれたくない、絶対に気持ちでも負けないと思ってマウンドに上がりました。(牧への)フォークは最終的に浮いちゃいましたけど、結果的に三振でよかったです」

そのまま、今季2度しか経験のない回またぎで、「CS仕様」として予定されていたという「守護神湯浅」として9回へ。2死からソトに中前打を許すも、代打大田を三ゴロに打ち取った。CS初登板で“プロ初セーブ”をゲットし「素直にうれしい」と笑った。

負ければ土俵際に追い込まれる一戦。シーズンでは見なかった「スペシャル継投」が結果的にハマり、大事な第1戦の勝利につなげた。勝負手に出た矢野監督は「準備はしてくれていたと思う。全員でつないで勝てた。『俺たちの野球』をやってくれたかなと思います」とねぎらった。

ハマスタは今季2勝11敗、8連敗でシーズンを終えていた。指揮官は「向こうのホーム球場で、展開的には苦しかったけどね。犠打失敗もあったし、もちろん反省すべきところもあるけど。でも、勝ち切れたというところは自信にして。明日で決めるというところでいけたらなと思います」と気を引き締めた。

湯浅はお立ち台の最後で、「みんなで力を合わせて絶対勝つので、明日も“アツアツ”な応援よろしくお願いします!」と声を張り上げた。虎のリリーフエースが大仕事をやってのけた。【古財稜明】

○…岩貞は渾身(こんしん)の1人斬りだ。2点リードの7回、2番手で登板。5番楠本を遊飛に仕留め、完封リレーのバトンをつないだ。「ヤギがエースらしく流れを作ってくれたおかげ」と笑顔。「無責任かもしれないですけど、仮に僕が(走者を)出しても、後ろはいい投手が多いので、みんなで残りのアウトを取っていくという意識だった。みんなで気持ちもプレッシャーも分散しながらできている」とブルペンの団結力も強調した。

○…3番手浜地がDeNAの代打攻勢に耐えてゼロのバトンをつないだ。2点リードの7回1死走者なしの場面で登板。代打宮崎を遊ゴロに仕留めると、代打ソトの二塁打で2死二塁。続く嶺井の打球は浜地の足をはじき転がったが、二塁手小幡が素早く処理して二ゴロになった。「勝っている場面でしたし、何とか先頭を切りたいと思っていきました。(打球が当たった箇所は)大丈夫です」と振り返った。

▼阪神はレギュラーシーズンで68勝71敗4分けの借金3でCSに出場。借金を抱えてプレーオフ、CSに進出したのは昨年巨人以来、8チーム目。公式戦5割未満で挑んだチームのうち、ファーストSを突破したのは4度。いずれもファイナルSで敗れており、日本シリーズに出場したチームは過去にない。阪神はデータを覆すことができるか。

◆湯浅京己(ゆあさ・あつき)1999年(平11)7月17日、三重県生まれ。福島・聖光学院2年冬に内野手から投手転向。3年夏の県大会はベンチ入りも、甲子園ではメンバーを外れた。17年にBCリーグのドラフトで1位指名され富山入団。18年ドラフト6位で阪神入団。3年目の昨季、1軍デビューし、今季は59試合2勝3敗、43ホールド、防御率1・09で最優秀中継ぎ投手。独立リーグ出身の投手では史上初のタイトル獲得となった。183センチ、81キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸500万円。

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