西武の育成選手、古市尊捕手(20)が14日、球団と支配下選手契約を締結した。「本当にうれしいという気持ちが一番で、ホッとしたという部分はあります」。カメラマンに「笑顔で」とリクエストされても、まだどこかぎこちない。

香川・丸亀市の出身。やっぱり、うどんは好きだ。おすすめの店を尋ねると、近所の店を教えてくれた。「通ってますね。常連で。なんだろう、でも、そういうのってけっこう、親の好みですよね」。昔から続けて行っている-。継続性、粘り強さが野球にも通じたりするのだろうか。

2軍イースタン・リーグで10試合に出場し、打率3割9分3厘と好調だ。だが、内容を細かく見るとすごい。スタメン、途中出場はいろいろあるものの、10試合中9試合で、第1打席で出塁している(安打7、四球2)。尋ねた。

「自分でも一応、それに気付いてて。実は、1打席目って…」

その先は戦略的なものもあるのでここでは控える。ただ、継続的にやっていることが実際に数字につながり、こうやって支配下登録という大きな結果に結びついている。

2月21日、プロ入り後初めてA班(1軍)キャンプに合流した日、いい顔をしてこう言っていた。

「失うもの、ないんで。ここまできたら、終わるか上がるかのどっちかなんで。いつも後悔なくやるようにしています」

後悔なく、コーチ陣から教わったことを愚直に反復練習してきた。昨秋のフェニックスリーグあたりから劇的な変化を見せてきた。2軍調整が決まった3月9日の試合後、通路ですれ違った。「このタイミングで落ちるってことは…。まだまだこれじゃ、支配下になれないので」。紳士的に対応してくれたものの、目には悔しさもにじませた。1カ月でしっかり作り上げてきた。

見ている人はちゃんと見ている。キャンプでA班昇格したその日、松井稼頭央監督(47)は古市の早出キャッチング練習をじっと見ていた。この日、試合には敗れ、指揮官は悔しそうではあった。しかし、最後に古市のことを尋ねると、表情が緩んだ。

「本人も当然、死に物狂いでやるって言ってたし。その姿が、ね。支配下おめでとう、って思う」

そんなお祝いムードもこの日ばかり。4月15日の朝日が昇れば、さらに厳しい戦いに身を投じる。讃岐の強いコシで頑張り抜く。【西武担当 金子真仁】