虎の左腕エースが歴史的快投だ。今季初登板初先発の阪神伊藤将司投手(26)が巨人打線を2安打無四球で完封し、71年村山実以来となる甲子園11連勝を飾った。5回1死から中田翔に左安打を許すまで完全投球。左肩違和感で出遅れたが、不安を一切感じさせなかった。21年9月から聖地では負け知らず。完封勝利は通算3度目で、いずれも巨人戦という「Gキラー」ぶりを発揮した。「巨人戦×甲子園=最強」の図式は今季も健在だ。

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大歓声を全身で浴びた。ヒーローインタビューの冒頭、伊藤将は甲子園の中心でファンに叫んだ。「最高です!」。声出し応援が解禁された甲子園の感想を問われると「最高です!」と再び言った。

巨人の右打者の体重が何度もかかとに乗った。2回、中田翔を144キロの内角直球で見逃し三振。ボールをよけようと後ずさりするシーンは、この1度だけではない。試合前、捕手坂本に「最近いいっすよ」と伝えたカーブも緩急を生むスパイスになった。5回1死までパーフェクト投球にも「どっかでヒットあるやろ、と思っていたので」とケロリ。昨季も甲子園の巨人戦は2戦2完封。背番号27に「巨人戦×甲子園」とくれば、勝利したも同然だ。

あの時の覚悟があったから、また甲子園で投げることができている。千葉・横芝中3年時、進路の選択肢は両手に収まり切らないほどあった。「多分、千葉県の学校はほとんど声をかけてもらっていたんじゃないかな…」。選んだのは地元ではなく名門・横浜(神奈川)。「自分、松坂さんに憧れていたので」。剛腕に夢を見た。

1学年10人ほどの中学の軟式野球部出身。特別、体が大きいわけではない。剛速球を投げるわけでもない。かつてプロゴルファーの夢を追った父正宏さんに問われた。「レギュラーになれなくても横浜行くのか」。迷いはなかった。「それでも行くんだ」。高校時代は2度、甲子園に出場。慣れ親しんだマウンドは、今や無敵の舞台になった。

3月中旬に左肩違和感で離脱した左のエースが、今季初登板でBクラス転落危機を救った。岡田監督からも「6回で100球いけば変えるつもりだった。ずっと少ない球数で『これは完封だな』という感じやった」とたたえられた。今季の目標はブレずに「2桁勝利と規定投球回。挽回してやろうという気持ちです」。ミスター甲子園の逆襲が始まった。【中野椋】

▼伊藤将が完封で今季初勝利を挙げ、甲子園球場では21年9月1日中日戦から11連勝。甲子園球場で11連勝以上は90~93年斎藤雅(巨人=11連勝)以来だが、阪神投手では36~38年に14連勝の御園生、43~44年に11連勝の若林、66年に12連勝の村山、70~71年に12連勝の村山次いで4人、5度目になる。これで甲子園球場の巨人戦は22年5月22日、同7月14日に続いて完封勝ち。阪神投手が甲子園球場の巨人戦で3試合連続完封勝ちは、江夏が68年9月17日、同9月19日、69年5月10日に記録して以来、55年ぶり2人目だ。

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