敵地に詰めかけた阪神ファンの声援が最高潮に達した。2点リードの8回、渡部の落球失策もあり、1死一、二塁。それでも、マウンドに立つ西武佐藤隼輔投手(23)には、さしたる影響はなかった。

「すごかったです。すごかったですけど、あまり気にしないです。いつも、相手の応援でガクッとなることはないので」

強がりではないことは、結果が証明する。打者は佐藤輝。ネット裏からアプリで測定すると、場内の音量は94・2デシベルをマークした。気に留めず、強打者のひざ元からスライダーを差し込む。二塁ゴロに仕留め、2死にした。

プロ2年目を迎える左腕は、オフのトレーニングで直球を強めてきた。シーズンが進み、自己最速155キロも投げている。勝ちゲームで8回を任され、防御率1点台。時折、打たれる日はあるものの、ホールドを順調に重ねてきている。

その直球の真価が問われそうな相手が、打席へ。日本ハム時代に「直球破壊王子」と命名され、現在は阪神でプレーする渡辺。臆せずに直球を2つ投げ込む。

3球目、149キロ。いつもより球速は出ない。打球が左翼へ上がる。その瞬間、音量測定アプリは98・8デシベルを記録。100デシベルは「ガード下にいて電車が真上を通過する音」と言われる。そんな割れるような歓声は、瞬時にため息へ。左飛。ピンチを切り抜け、何事もなかったかのように笑顔を見せる。今度は左翼席の西武ファンが割れんばかりの拍手と歓声を送った。

ボール先行する時もある。でも。「力まず。ムキになったら終わりだなと思うので。淡々と投げるのが全てだと思うので」

そうして重ねたホールドが「10」に達した。球界屈指の大声援も乗り切ると「甲子園だったら、もっとすごいんでしょうね」。相手ファンへのリスペクトも忘れなかった。【金子真仁】

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