右袖に喪章をつけた左腕が、最後までマウンドに立ち続けた。

半旗が掲げられる中、広島床田寛樹投手は昨年5月10日阪神戦以来の完封勝利。登板前に聞いたOB北別府学さんの訃報に驚きつつ、勝利を誓って臨んだ。「いい報告ができるようにと思って投げていた。途中からはもう、とりあえず勝ちたいと思って投げた。結果こうやって勝ててよかったです」。通算213勝を挙げた先輩のように、ただ勝利のために腕を振った。

4回からの3イニング連続を含む4度、先頭打者に安打を許しながら粘った。チームは前夜、中継ぎ6投手を投入しただけに、「昨日の試合を見ている時から、長いイニングを投げないといけないと思いました」。主戦として、中継ぎ陣のためにもマウンドを降りるわけにはいかなかった。8回まで106球。それでもその裏の打席に立ち、9回も続投した。最後は西武の中軸を3者凡退。切れのある真っすぐと鋭く変化するツーシームを軸に27アウトのうちゴロで17個を奪い、持ち味を発揮した。6勝目を手にし、防御率1・69はリーグトップだ。

新井監督は弔い星に「北別府さんが見てくれていると思って、みんなで頑張りました」と振り返った。この日のウイニングボールは北別府氏のもとに届けられる。【前原淳】

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