大阪に帰ってきても強い! 阪神左の代打の切り札、糸原健斗内野手(30)が決勝の適時二塁打を放ち破竹の8連勝を導いた。再三のピンチを美技や継投でしのぎ1-1で迎えた8回。ヤクルト清水から深々と右中間を破り、一走木浪を長駆生還させた。チームは両リーグ最速の60勝で、夏の長期ロード8連勝は藤本定義監督時代の1968年(昭43)に並ぶ球団記録。引き分けた2位広島とのゲーム差を6に広げ、京セラドーム大阪が沸き返った。

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糸原が勝負をつけた。阪神が約半世紀ぶりの「長期ロード8連勝」を決めた。

8回に投手4人をつぎ込み、なんとか0に抑えた直後の攻撃だった。木浪の安打で1死一塁。両軍、2点目が遠い中、岡田監督は「左の代打」糸原を告げた。 「みんな頑張っていたので。あと、延長は嫌だったので打ちました」

右のセットアッパー清水の5球目。右中間方向への低いライナーには二塁手のジャンプも届かない。無人の人工芝を転々とする間に、一塁走者木浪は一気に生還を果たした。「木浪も全力で帰ってくれたし、食らいついて、いいところに飛んでくれた」。二塁上に達した仕事人は両手をベンチへ掲げた後に、フーっと一息。静かに喜びをかみしめた。

昨季までの二塁のレギュラーが一転、今季は開幕から「左の代打」としての起用が続く。相手も勝利の方程式が出てくるなど難しい場面での起用が多い中、「準備だけは怠らないようにやっています」と職人ぶりを発揮。今季の代打安打は7本目だが、タイムリーによる勝利打点は初めての快感だった。

1点を争う終盤。さまざまな攻撃を仕かけられる場面だった。糸原は懸命にサインを確認。だが、名前を告げた時点で岡田監督の腹のうちも決まっていたという。

「一生懸命サイン見てたけど、サインなんかないって。バントさすんやったら、バントするやついかすって。糸原、打つやつやから」。絶大な信頼に応える采配ズバリの一打。「最初から糸原いくつもりやから。木浪がヒット打とうが打たまいが」と、会心の笑顔で起用を振り返った。

2位広島との差を6ゲームに広げ、夏の長期ロード10戦9勝1敗発進は、長い猛虎史でも球団最高成績だ。7月30日以来のホーム開催となった京セラドーム大阪はお祭り騒ぎ。お立ち台では開口一番に「最高です!」と、かみしめた。

この勝利で、68年以来となる夏の長期ロード8連勝。55年ぶりの記録に並んだが、今の勢いなら新記録も可能性十分。真夏の猛虎が強すぎる。【波部俊之介】

▼阪神は3日中日戦から8連勝。夏の長期ロード期間中(高校野球開催中の甲子園以外での試合。他球場での主催試合も含む)では、68年の8連勝と並び球団最長となった。また、長期ロード初戦の10戦を9勝1敗は、63年の8勝1敗1分けを超え最高となった。

▼また、京セラドーム大阪が現在の球団名となって以降、長期ロード中のヤクルト戦は、初戦となった10年8月13日で負けたので、次戦から14連勝となった。

【動画】ベンチ総立ち!阪神糸原健斗が代打決勝タイムリー 右中間真っ二つの痛烈ライナー