強い。強い。強すぎる。阪神岡田彰布監督(65)が“余裕のタクト”で2位広島を連倒し、最大10ゲーム差をつけて優勝マジックを7に減らした。マジックが一気に3も減る珍現象に「3っていうのはオレも分からんけど。何あれ?」と不思議そうに笑った。

驚いたのは4点リードの9回だ。イニングまたぎの桐敷がプロ初セーブかと思われた。だが、2死から2人目の走者を出すと、守護神岩崎を投入。左腕はデビッドソンを二ゴロに仕留め、リーグ単独トップに立つ31セーブを挙げた。

指揮官はにんまりだ。「よう(走者を2人)出しよったわ。桐敷も。(タイトルを)狙えるところにおったらな、そら取らせたらなあかんから。2人、2人(走者出ろとベンチで)言うとったんや」。9回は走者2人を置いて登板すればセーブのシチュエーション。ピンチつくれと願っていたと明かし、見事“珍ゲキ”に応えた桐敷をたたえた。18年ぶりのアレはほぼ確実ながら、優勝が未決定の時点でタイトルを念頭に置いた采配は余裕のたまもの。功労者岩崎に報いたい親心を感じさせた。

今季の虎の安定した戦いは、過去5度のリーグ優勝とひと味もふた味も違う。3位は4月21日の1度だけで首位につけられた最大のゲーム差は3。5月13日にDeNAと同率首位に立って以降、2度首位陥落してもすぐに次の試合で首位に返り咲くなど、9割以上首位にいる。残り19試合で2位に10ゲーム差をつけた。初Vの62年、64年はともに逆転優勝。85年は広島と05年は中日と最後まで競り合った。独走だった03年も後半戦は負け越すなど、星野監督は「ああ、しんどかった」と名言を残している。

ゴールテープが迫ってきた。それでも岡田監督は首を振った。「いやいや、カウントダウンはまだやろ。やっぱり(ゴルフの)シングル(プレーヤーのハンディ)でも片手以下やろ。片手以下にならんとやっぱり強ないもんな」。大好きなゴルフにたとえて笑顔。10日も広島に勝てば優勝マジックは5まで減る。次はどんなマジックがさく裂するのか。ゲームセットまで岡田采配からも目が離せない。【石橋隆雄】

<岩崎「キリが2アウトを取ってくれた」>

岩崎がリーグ単独トップの31セーブを挙げた。岡田監督のアシストを受け、4点リードの9回2死一、二塁で桐敷を救援してデビッドソンを仕留めた。「キリ(桐敷)が2アウトを取ってくれていたのでよかったです」と汗を拭った。甲子園のデーゲームは9回に3失点して逆転負けした6月17日のソフトバンク戦以来だったが、しっかりリベンジ。並んでいた中日マルティネス、ヤクルト田口を引き離した。「勝てるように頑張ります」。静かな闘志で積み上げていく。

○…阪神石井(7回途中から2番手で登板し1回を無失点)「(2位)と直接対決ですし、ゼロに抑えられてよかった。80%の気持ちでマウンドに上がって、試合になって100%になるくらいで上がっています」

○…阪神桐敷(3番手で1回無失点)「0でいけたのはよかった。いつも通り普段通りに投げることを、まあランナー出しても0でというところを意識しました」

○…阪神坂本(大竹の10勝を好リードでアシスト)「同じ相手にも何回も勝てるのはリーグ戦やっていて大事なこと。1年間通してやるのは難しい。すごいなと思います」