西武の本拠地ベルーナドームがある埼玉・所沢市が11日、一気に冷え込んだ。

気温14度。グラウンド横の木々もだいぶ赤い。宮川哲投手(28)に「すっかり秋ですね」と話しかけた。「いやぁ、夏っすね」とやっぱり、返ってくる。

2月、宮崎・南郷。高橋光成投手(26)とキャンプ休日に、風にやられながら鵜戸神宮へ2時間自転車をこいだ。「なめてたっす。きつかったっす」。ヒィヒィ言いながら、こいだ。ノースリーブだった。

春も夏も、ずっと上着に袖がなかった。

口癖のように「暑いっす」という。「めっちゃ暑がりです」。奈良・生駒の生まれ。「まぁ、盆地なんで暑いっす」。高校は山形へ。「盆地だし、内地の方やから暑いっす」。大学は群馬。「盆地。群馬が一番暑かったんじゃないっすか? 暑いとこばっか行ってるっす」。

8月、炎天下。「暑いっす。常に暑いっす」と汗だらだら。「暑い」や「眠い」の言葉が多いのはO型気質とも言われる(?)が、宮川もそんな1人か。

プロ4年目の今季。リリーフとしてオープン戦を進めていたが、開幕前に2軍に落ち、そこから先発調整に変わった。強力先発陣を支える“7人目、8人目、9人目”をチームは欲していた。いわゆる1軍ローテの「谷間」を任され、4試合で1勝2敗、防御率7・16。打たれた。

「まっすぐもそこまで悪くなかったんですけど、2回以降に…ですよね。そもそもまだ(1軍で)長いイニング投げる体力がなかったっすね」

打たれて、2軍でノースリーブで走って-。そんな姿をよく見かけた1年だった。ただ、唯一の白星は6月1日、交流戦。今季の日本一になった阪神打線に5回で5安打4四球を許しながら、何とか1失点でしのぎきった。「めっちゃ打たれたんですけど、ゲッツーが多くて。要所で良かったですね」と振り返る。

そんな先発初勝利のウイニングボールが一時期行方不明になったのも、キャラ立ち豊かな宮川らしい。チームで流行のロンゲは「(僕は)絶対ないです」と食い気味即否定。「最初にバリカン入れて、そのあとシェービングでそって」。袖なし、短髪。100メートル以上先からでもすぐに宮川哲だと分かる。

その存在感を、来季こそマウンドでも。ブルペンで鳥羽一郎「兄弟船」を伝授したボー・タカハシ投手(26)も先発挑戦する流れだ。“兄貴”はさて。

「言われたところでしっかり。両方行けるってなったら、多分それは武器だと思うので」

ドラフト1位入団も、来季は勝負の5年目。熱気もますますたかぶる。

…と2分ほど話しながら宮川の腕を見たら、鳥肌が立ち始めていた。

「寒いっすよ。動いてないと」

秋が深まるどころか、暦の上ではもう立冬である。【金子真仁】

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