目指せ右のT-岡田! 阪神井上広大外野手(22)が16日、新打法で岡田彰布監督(65)にアピールした。

高知・安芸市での秋季キャンプ最終クール2日目。フリー打撃で84スイングし、18本の柵越えを放った。指揮官はオリックス監督時代の愛弟子・T-岡田外野手(35)も、同じ「ノーステップ打法」を取り入れた10年に本塁打王となったと回想。母校履正社(大阪)の大先輩のような覚醒が待たれる。

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安芸の曇天を吹き飛ばすような鋭い打球だった。井上が「ノーステップ打法」で柵越えを連発した。岡田監督が見守る中、フリー打撃で18発。「今日はえらい良かったな」と指揮官をうなずかせた。

今季は4月28日の1軍巨人戦でプロ初3安打を放ち存在感を見せたが、5月中旬に2軍降格。不振だった7月に「どん底だった時を乗り越えられるかなと思った」と取り入れたのが、左足をほとんど上げない今のスタイルだ。「いつでも打てる準備ができているので、タイミングが刺されにくい」。昨季も取り組んだ時期はあったが、確実性を増すために再び導入した。

岡田監督は「それでホームラン王とったんや。T(T-岡田)もなあ。ノーステップで」と回想する。オリックス監督時代の10年、T-岡田が33本塁打を放ち本塁打王となった要因に、井上と同じノーステップ打法があるとした。「5月くらいやったかな。ノーステップにさせたんは途中からやで」。敵地楽天戦の際に室内練習場で直接指導し、打撃フォームを改造させたことが出発点だった。

「確実性を増そうということやんか。Tもそうやん。まず打率を上げようと。そこからの基準で、ヒット狙いがホームランにもなあ、他のもんよりもパワーがあるわけやから」と続ける。09年オフに「同じ名前でややこしい」とし、現在の登録名「T-岡田」に変更するきっかけをつくり飛躍に導いたかつて教え子。そのパワーは、履正社の後輩にあたる井上とダブる部分もある。

大先輩は高卒5年目でタイトルを獲得しており、来季同じ年数を迎える井上にとっても勝負のシーズンとなる。同学年が大卒1年目で入団するが「何年目とか関係ない。何かでチャンスをつかむこともあるわけやから」と岡田監督。森下、ノイジー、前川らとの両翼争いへ、若き長距離砲も「このキャンプでアピールできるところはして、2月、3月と結果を残していければ」と力を込めた。井上が「第2のT-岡田」になれば、虎の戦力は自然と分厚くなる。【中野椋】

◆T-岡田の覚醒 09年オフの同姓の岡田監督就任を受け、登録名をT-岡田と変えて10年を迎えた。岡田監督から「最初から2ストライク後のバッティングのつもりで行け」と指示を受け、ノーステップ打法を採用。体の開きと軸の安定に留意し、一気に成長を遂げた。前年09年の7本塁打から大幅増の33本塁打を放ち、初のキングを獲得。就任早々「ずっと使っていく」と明言してくれた、岡田監督の期待に応えた。