“炎のストッパー”の魂を受け継ぐ。楽天則本昂大投手(32)が5日、仙台市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、現状維持の年俸3億円でサイン。7年契約の6年目となる来季は、クローザーに転向すると表明した。抑えの理想像とするのは、広島で活躍した同じ背番号14の故津田恒実氏。今オフ、メジャー移籍を狙う2季連続セーブ王、松井裕樹投手(28)に代わって守り神になる。

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紺色のスーツにめがね姿の則本が、いたずらっぽく笑った。先発を主戦場に通算263試合に出場。114勝(91敗)を誇る楽天のエースは「今江監督から要請を受け、松井裕樹の後釜じゃないですけど、クローザーを務めたいなと思ってます」と抑え転向を表明した。中継ぎ登板は18年10月13日ロッテ戦を最後に5試合の経験しかない。先発へのこだわりもあったが「冗談じゃないんで」と守護神・則本誕生を強調した。

約1カ月前に今江監督から抑え転向を打診された。「監督に就任してから、まず一番最初に考えた」と熱い言葉をかけられた。驚きはあったものの、覚悟は決まった。「僕で務まるか分からないですけど、監督の気持ちに応えたい」。特別なポジションを託されたことがうれしかった。

メジャー移籍を目指す松井裕にも相談した。通算236セーブの左腕からは、抑えの心構えや調整方法などの助言を受けた。その中で「先発だろうと、抑えだろうと、中継ぎ、セットアッパーだろうと、仕事が変わるわけじゃない」といった発想が新鮮だった。打者を抑え、アウトにするのは同じという考えで「『気持ちを変える必要はない』と後輩ですけど、教えていただきました」と明かした。

新たな挑戦が始まる。プロ11年で通算セーブ数は0。「松井裕樹が偉大すぎてしんどい」が本音だが、来季は30セーブを目標に掲げる。広島で“炎のストッパー”と呼ばれた津田氏が則本の理想の守護神。脳腫瘍で若くして世を去った故人の座右の銘「弱気は最大の敵」という言葉を、大切にしている。「自分らしく締めて勝利をチームに持ってこれるようにしたい」。強気の投球で9回のマウンドに君臨する。【山田愛斗】

◆先発投手の抑え転向 則本は通算263試合で114勝を挙げ、救援経験は5度だけ。過去の主な投手では阪神時代に先発の江夏豊が、76年の南海移籍以降に最多セーブ6度。槙原寛己(巨人)は35歳の98年から2年で18、23セーブ。99~06年に先発で102勝した上原浩治(巨人)は07年に32セーブ。涌井秀章(現中日)が西武時代の12年に30セーブを挙げた例などがある。

○…則本は来季から投手キャプテンに就任し、同学年で野手キャプテンを務める浅村とチームをけん引する。「1人ではそんなにうまくできないと思うんで、アサと力を合わせてやっていきたい」と決意表明した。複数の後輩選手へのパワーハラスメントで安楽智大投手(27)が自由契約となったことにも言及。「今回、チームの中でいろいろあったので、チームを良くするために、2度とこういったことが起きないように、チーム全員、全体で改善していかないといけない」と誓った。4季務めた選手会長は田中和に引き継ぐ。

【一覧】プロ野球12球団の契約更改状況