ソフトバンク小久保裕紀監督(52)が14日、FA加入した山川穂高内野手(32)の人的補償で西武に移籍した甲斐野央投手(27)との真剣勝負を心待ちにした。故郷の和歌山市で行われた後援会主催の激励会に出席。現役時代の03年オフに無償トレードで巨人に放出された実体験を踏まえて“移籍は野球人生のプラス”とエール。強敵になる160キロ右腕に「全力で点を取りにいきますよ」と宣戦布告した。

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小久保監督が西武移籍が決まった甲斐野に惜別の言葉を送った。「電話も来ました。あのキャラクターなのですぐに溶け込めると思う。いいムードメーカーになると思います」。18年ドラフト1位の最速160キロ右腕の流出は大きな痛手だ。だが、すべてが決まった以上、スポーツマンらしく堂々と対峙(たいじ)する。「間違いなく勝ちゲームには出てくることになる。試合が始まったら、全力で点を取りにいきますよ」と笑顔で“先制口撃”した。

今回の人的補償は10日時点で、西武側は和田毅投手(42)を指名する方針を固めていた。だが、ファンからの批判殺到なども考慮し、甲斐野に選び直される急展開があった。だが、指揮官も現役時代の03年オフ、無償トレードで3年間の巨人移籍を経験。甲斐野に伝えたいことがあった。「俺はジャイアンツと2球団やったけど、野球人生というか、人生で考えたらジャイアンツの3年間は大きかったね。あれがないと今の立場も侍(の監督)もないでしょうから。いい3年間でした」。

他球団を経験することによるメリットを力説し「基本人生は必然、必要、ベストなタイミングでことは起こる」と背中を押した。若かりし頃は「なんで俺だけが」「なんで自分だけこういう目に遭う」と悲観することもあったという。「でもいっぱい重ねると全部必然、必要なタイミングと思えていた。それは人生観。だってしょうがない、変えられない。悩んだって」。すでに甲斐野も新天地で守護神定着に意欲を見せている。「敵ですけどね。いち野球人としては応援してますよ」とエールを送った。

激励会には和歌山県出身で、昨季チーム最多の56試合に登板した津森の父も参加。「ポジション的には(甲斐野と)同じところ。より一層チャンスにもなるし、勝ちパターンに近い位置で投げてくれることを期待してます」。ポスト甲斐野の活躍を願った。セットアッパーの流出は寂しい。だが、昨日の友は今日の敵。野球人として真剣勝負に臨む。【只松憲】

◆巨人移籍後の小久保監督 03年オフ、異例の無償トレードでダイエーから巨人に移った。4番も務め、1年目に放った41本塁打は、長嶋や清原、落合らも達成できなかった巨人右打者初の40本塁打超え。交流戦本塁打王など34発を放った05年には外様ながら主将に就任するなど、リーダーシップも発揮した。06年オフ、FAでソフトバンクに復帰。12年に引退するまでの6年間で、リーグ優勝2回と日本一1回に貢献した。その後は侍ジャパンの監督を務め17年の第4回WBCは4強。21年にソフトバンクにヘッドコーチで戻り、22~23年の2軍監督を経て今季から1軍監督を務める。

○…小久保監督が激励会で4年ぶりのリーグ優勝奪回を誓った。岸本和歌山県知事や尾花和歌山市長、星林高校の関係者など約300人が集合。乾杯前のあいさつで「ここからがスタートです。次は勝った年でみなさんにお会いできるように、今年1年、精いっぱい頑張ります」と決意表明した。会の終了後は「でもね、負けたらみんな去るので。勝負の世界ですから」と引き締めていた。

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